国内外フィールドワーク等派遣事業 研究成果レポート





大内 英範(日本文学研究専攻)
 
1.事業実施の目的 【c.国内フィールドワーク派遣事業】
  源氏物語古写本の調査
2.実施場所
  彦根城博物館
3.実施期日
  平成18年3月11日(土)
4.事業の概要
 

現存するもっとも古い源氏物語の写本は、鎌倉時代はじめの書写とされている。室町期書写の大島本にばかり目がゆき、鎌倉時代の書写本は、あまり顧みられることがなかったといえる。鎌倉時代の写本の悉皆調査は、いまだなされていない。これは早急に行われるべきことである。

その一環として、彦根城博物館にて、同館蔵の源氏物語古写本(明石巻・鎌倉時代書写)を閲覧し、その料紙、装丁、継ぎ目の様子などの書誌的事項を調査し、加えて書き入れの情況や本文の特徴を調査した。

5.本事業の実施によって得られた成果

十一世紀はじめに成立したとされる源氏物語は、そのオリジナルはおろか、平安時代の書写本も現存していない。現在我々が読んでいる源氏物語は、十五世紀に書写された、大島本(飛鳥井雅康筆本)を主底本としている。大島本を校訂してできた本文を使用しながら、年間百本を超える源氏物語関連の論文が蓄積されてきた。古典作品を読む場合、まず行われるべきは、本文批判であるが、池田亀鑑の源氏物語大成によって、その段階は終了しており、源氏物語の最善本は大島本だという池田の成果に沿って、この半世紀のあいだ、源氏物語研究は進められてきたのである。
いっぽう、現存するもっとも古い源氏物語の写本は、鎌倉時代はじめの書写とされている。室町期書写の大島本にばかり目がゆき、鎌倉時代の書写本は、あまり顧みられることがなかったといえる。鎌倉時代の写本の悉皆調査は、いまだなされていない。これは早急に行われるべきことである。
今回は、彦根城博物館にて、同館蔵の源氏物語古写本(明石巻・鎌倉時代書写)を閲覧し、その料紙、装丁、継ぎ目の様子などの書誌的事項を調査し、加えて書き入れの情況や本文の特徴を調査した。
 その結果、他機関に所蔵されているいくつかの写本と僚巻であることが推定できるデータを読み取ることができた。このことは、あまり数が多いとはいえない鎌倉期写本の研究にとって、確実な前進である。
今後は、そうした僚巻をも含めて、書写様態、書写態度、書写者の文化圏、親本・祖本の推定などの研究を進めてゆきたい。

※現在論文にまとめているところであり、一部の成果については非公開とする。

6.本字業について
   本事業の複写費を利用すると、その複写物は基盤機関の所有となるということだった。手元に資料が欲しかったので、私費で複写をした。今後ご検討いただければと思う。

 
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