国内外フィールドワーク等派遣事業 研究成果レポート





大内瑞恵(日本文学専攻)
 
1.事業実施の目的 【c.国内フィールドワーク派遣事業】
  近世前期皇族・公家の文学・文化に関する文献調査
2.実施場所
  天理大学附属天理図書館
3.実施期日
  平成18年1月31日(火) から 平成18年2月3日(金)
4.事業の概要
   近世前期の皇族・公家の文学については近年、論じられる機会が多少増えたものの、依然として、地下(武家・町人など)との接点について論じられることは少ない。
  そこで、今回の調査事業においては、天理大学附属天理図書館に所蔵されている連歌資料を中心とした連歌・俳諧資料を調査し、その人的構成、また文学的営為をデータ化することによって、より精密な人的交流の様子を明確にしたいと考えた。
5.本事業の実施によって得られた成果
 今回の調査事業によって、たいへん有益な調査結果が認められた。
  短時間で50点の資料を閲覧し、調査したため、その分析には時間がかかってしまったが、今後の研究の方向性を定める一指針となったことは間違いのないところである。
  現在、近世期の皇族、公家、特に後水尾天皇(1596~1680)とその兄弟、子供たちを中心とした文化圏と地下人(武家・町人など貴族以外の人物と定義する)との交流圏について調査中であるが、その広がりを具体的に示すことができると同時に、個々の人物の文学的変遷をも論ずることができるのではないかと考えている。
  ただし、現在調査対象とする、後水尾天皇の兄弟は(女性を除いて)主立ったものだけでも、14人。子供たちは10人。実際はもっと多いので文学的な面から見て今後も増える可能性は大変大きい。こういった一つの時代を論ずるとき、焦点となる人物は一人であってもその周辺人物をどれだけ拾い上げることができるかが、研究の重要な要点であるため今回の調査により、その広がりと文学サロンの推移の一端に触れることができたことはたいへん有益であったとともに、調査を継続することによって、よりいっそうのデータを収集し、博士論文の重要な一章となると考えられる結果につながった。
  今回は、時間の関係上、連歌・俳諧資料を中心に調査する結果となったが、今後もこの調査の範囲を広げ、よりいっそう皇族・公家の文事について考察したいと考えるものである。

6.本事業について
    「概要」「成果」に記したように、一つの時代の文化状況を調べるとき、さまざまな資料を調査しなければならない。今まで、時間的・経済的事情から、なかなか遠方の地域への調査に赴くことができなかった。
  本事業のおかげで一箇所にとどまることなくさまざまな資料を調査することができ、研究のさらなる展望も開けたと思う。
  今後も、本事業の継続によってさらなる研究ができると思う。
  今回の調査だけでは、すぐ結果がでるというものではないが、近世の堂上と地下の文事の交流を探るという点では、いずれ論文発表し、広くみなさんのご叱正を仰ぎたいと思う。
  その点においても、本事業はさまざまな可能性をもっているため、多いに期待できると思う。

 
 戻る