国内外フィールドワーク等派遣事業 研究成果レポート





林 海福(メディア社会文化専攻)
 
1.事業実施の目的 【g.海外教育研究機関活用事業】
  中国におけるユーザビリティの現状を把握し、日中におけるユーザビリティの発展について、学生たちとディスカッションを行うことは今回の目的としています。
2.実施場所
  Sino-European Usability Center (SEUC)    Dalian Maritime University
3.実施期日
  平成18年2月18日(金) ~ 平成18年2月27日(月)
4.事業の概要
  「ソフトウェア開発におけるユーザビリティ」の現状調査

 本調査は中国の大連海事大学―Sino-European Usability Center (SEUC)で、中国におけるユーザビリティの現状調査および在校生たちと中日におけるユーザビリティの将来についてディスカッションを行った。
 Sino-European Usability Center は2000年に創設され、中国では初めてのユーザビリティ研究センターである。この研究センターの創設は、欧盟第五機構企画であり中国政府中欧科学技術連盟および欧盟Asia-ITC企画から提供支持し、欧米ユーザビリティネット(Usability Net)の一組織となっている。欧米ユーザビリティネットは、約20ヶ国のメンバーが参加されている機構である。この機構によって、SEUCは世界中でのユーザビリティ事業を行うことができる。現在、中国国内向けの製品やソフトウェア関係のユーザビリティ評価、開発などのコンサルティング事業を運営しながらユーザビリティの教育を行っている。また、NCR会社のNCR HCI Research Associateのプロジェクトがあり、それによって、毎年一人か二人の学生が相関する研究プロジェクトに参加しながら自分の研究を進められるという教育プロセスがある。
Sino-European Usability Center (SEUC)で行った活動は、次の通りであった。

1. 劉教授によるSEUCについて
 中国のSino-European Usability Center は、初めてのユーザビリティ研究センターである。ここで、劉教授は(SEUC)の創設からはじめ、協賛企業や関連会社、開講されている授業科目、在学生、教員の状況などについて紹介していただいた。

2. 劉教授による中国におけるユーザビリティの現状の紹介
 中国では、ユーザビリティの事業は近年から発展し始まったが、科学技術の進歩につれ、ユーザビリティの認識が高まっていると同時に、ユーザビリティ専門人材が足りないという現状になっている。

3. 「ペーパープロトタイピング手法」の発表および学生とのディスカッション
 修士論文である「ペーパープロトタイピング手法」についての研究内容を紹介し、その内容について、20名程度の学生たちとディスカッションを行った。このディスカッションの行ったことによって、ペーパープロトタイピング手法についての認識を一層深めた。

4. ユーザビリティの学習現場と実験ラボの見学
 研究室は、1つの部屋となり、約30台コンピュータが設置され、学生たちがお互いにコミュニケーションを取りやすくなるように配慮されている。ユーザビリティラボは、とてもシンプルで、観察室と実験室の二つ部屋となっている。普段は学生たちのミーティングやディスカッションをする場所となっているが、実験のときだけまた試験ラボになるという多目的室である。

5. 在学生とユーザビリティについてのディスカッション
 中国のユーザビリティに関する資料は、欧米に関する情報が豊富だが、日本におけるユーザビリティの現状はまだ知られていない。そこで、学生たちと中日におけるユーザビリティの現在と将来についてのディスカッションを行った。

5.本事業の実施によって得られた成果
 本調査を行うことによって、得られた成果としては、中国におけるユーザビリティの現状とユーザビリティ教育の現状が把握できた。
その具体的な内容は次のようだ。

1. 中国におけるユーザビリティの現状について
 近年、中国では、ユーザビリティの認識が高まっている。多くデジタル製品や、ホームページ、ソフトウェアなどの開発では、ユーザビリティに関するプロセスを取り込んだり、現存する商品、製品などのユーザビリティ評価を行ったりしている。技術の進歩に従い、中国は世界最大のIT市場と製造国になることが予想される。そのような状況のなか、ユーザビリティ専門家が不足していることは大きな問題となっている。また、ユーザ自身にユーザビリティはまだ認識されていないようで、それもこれからの大きな課題だ。

2. ユーザビリティ教育上の現状について
中国の大学では、ユーザビリティ人材育成の学校はまだ少ない状態である。
Sino-European Usability Center (SEUC)は2000年に開設され、中国でははじめてのユーザビリティ研究センターで、現在約30名の学生、教員5名で、主にユーザビリティエンジニアリングや、ヒューマンインタフェース設計などの人材育成を目標としている。この専攻の授業科目はユーザビリティエンジニアリング、認知科学、ソフトウェアなどの7つである。また、ユーザビリティと認知心理は深く関与しているため、これからは心理学に関する授業も開講しようと考えているそうだ。同様の専攻は、そのほか、北京清華大学工業工程系のユーザビリティ研究センターや、北京藍宇研究センター、上海交通大学研究センターに開設されているが、中国の国情から考えると、まだまだ少ない状態と考えられる。また、ユーザビリティに関する参考書類や研究資料などは、とても少ないというのが現状である。
  本調査は博士研究論文にはならなかったが、中国におけるユーザビリティの使用状況と教育上の現状を知ることによって、これからの日中におけるユーザビリティについての国際交流を目に付くようになるだろう。

6.本事業について
   本事業の参加することによって、同じの専攻である海外の学生たちとの学術交流ができ、研究視野が広がった。

 
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