研究科選定国際会議等派遣事業 研究成果レポート





林 海福(メディア社会文化専攻)
1.事業実施の目的 【f.研究科選定国際会議】
  日中及び欧米におけるユーザビリティの現状を把握することを目的とした。
2.実施場所
  中国・杭州 Dragon Hotel
3.実施期日
  平成18年11月3日(金) ~ 平成18年11月5日(日)
4.事業の概要
   本事業の「User Friendly 2006(DDF.UPA中国)」は、中国の杭州で平成18年11月3日から5日まで開催された。DDF.UPA中国は、2004年に上海で結成され、ユーザビリティ領域で自国の発展の交流を図るために、毎年User Friendly国際年会、交流会、ワークショップが開催される。 本事業の参加者は、約11ヶ国、120の企業から550人が集まり、各国の会社の製品やソフトウェアにおけるユーザビリティの研究を講演式、ワークショップ式とラウンドテーブル式で交流を行った。

本大会のプロジェクトは、次の通りであった:
11月3日  ユーザビリティ専門家による講演会、 全員ディスカッション
11月4日 ワークショップ(19テーマ)
11月5日  ワークショップ(4テーマ)
ラウンドテーブルミーティング(8テーマ)

 初日に、DDF.UPA中国の委員長が中国におけるユーザビリティの現状および、DDF.UPA中国の将来の発表をはじめ、SAP、HFI、HP、Googleなど各国の専門家が自会社の製品やソフトウェアにおけるユーザビリティの現状や発展などの講演を行った。二日、三日目に、ユーザビリティに関するワークショップや、ラウンドテーブルなどの交流を行った。そこで、以下のワークショップに参加した。

「From User’s Behavior to Interaction Design」
 このワークショップでは、韓国Yahoo会社の代表より、ヒューマン、コンピュータ、インタラクション3位一体のモデルを述べ、続いてビジネスの面からホームページサービスの設計方法および、ユーザ行為からインタラクションデザインの作成手法を発表した。それに加え、途中に参加者5~8人のグループ分けを行い、実際にインタラクション設計プロセスに沿って、ユーザが欲しいホームページをデザインし、それぞれの発表を行った。

「Design Check point : A Fast and Easy Technique for Evaluating Designs with Customers」
 カナダQuarry Integrated Communications 会社の代表Robert Barlow-Buschは、ユーザの意見が設計プロセスに如どのように影響されるかを述べ、ユーザ評価による設計テクニックを講演し、ユーザ評価によるホームページの設計手法の演習を行った。

「Advanced Date Collection and Analysis Tools for HCI Research and Usability Testing」
 アメリカNoldus Information Technology Inc会社のPeter Chenは、HCI研究とユーザビリティテスティングにおける設備と分析ツールについて講演し、チケットの自動販売機をテーマとし、ユーザテストに必要な設備を取り上げた。
本事業は3日間を通して、諸外国の専門家の発表によりそれぞれの分野におけるユーザビリティの特徴や発展などについての情報交換と専門家との交流を図った。


5.本事業の実施によって得られた成果
   本事業を参加することによって、次のような成果が得られたと思う。
・文化の違いによるユーザビリティについて
 初日、各国からの専門家による具体的な製品や日常に使われるホームページ、ソフトウェアなどのユーザビリティの評価例を紹介し、ユーザビリティの活用に関する理解を深めた。特に国による文化の違いからユーザビリティの多様性に大きな影響があることが分かった。その意味を踏まえて解釈すると、国際的なユーザビリティ活動が重要だと感じだ。

・理論から実践への検証について
 二日間のワークショップを通して、実際の現場ではユーザビリティの活動がどのように行われているかを体験でき、ユーザ行為からインタラクションデザインへのプロセスについての理解が深まった。参加者の大半は、開発、設計関係の仕事に従事している人で、多くの開発現場において、設計者たちが開発初期段階で参加しない現状であった。また、インタラクション設計する作業については、誰がどのような作業を担当するかにより、ユーザニーズに満たす共通的な方向性が重要なことだと分かった。

・中国におけるUE(User Experience)とHCI(Human Computer Interaction)の発展状況と将来性について
 中国におけるユーザビリティという分野は、近年から注目され、現在多くの領域で活用されている。特に、ソフトウェア関係の分野では、ユーザビリティ評価が必要となっており、多くの会社では、UE、UIに関する部署が増えていく傾向がある。教育上では、HCIの分野が1つの学科として開講され始まっているが、UE分野ではまだはっきりなされていない状況である。そのため、どのような学科に取り込むかは、まだ不明確であった。
本事業を参加することによって、現場の開発者および設計者と一緒に設計プロセスの実践ができ、さらに現場では、設計者の参加を促進する認識が図られたことは、非常に貴重な成果だと考える。

6.本事業について
   本事業を参加したことによって、博士論文に関係した多くの情報を収集することができ、良い勉強が出来たことに感謝致します。特に、学生にとって、経済的に海外の研究会に参加することは大変厳しいことです。この支援事業のお陰で、有益な研究情報が得られたことと専門家達との交流ができたことに非常に恐縮しております。
今後もこのような事業を続けることを願っております。

 
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