洛中洛外図に於ける「風流」 

今回、我々の専攻では「洛中洛外図歴博甲本」の中より、芸能に関する部分を取り上げようと考えた。我々の研究は、文字資料を利用して行うのが常である。研究の対象には芸能も含まれるのであるが、これも通常、文字資料をもって行う。ただし研究を進めていく中で、画証資料を取り扱うことも多い。これは文字資料と画証資料の相互補完的な検討を重ねていく中から、その芸能が行われた当時の姿に迫ろうとするものである。こうした多角的な検討は文学研究において不可欠な姿勢である。そうした見地に則って「洛中洛外図歴博甲本」に向き合うにあたり、芸能の中でも左隻第六扇下「町通、一条通」の部分に描かれている「風流」に注目した。

「風流」はさまざまな画証資料に現れている。しかしそこで歌われていたであろう歌詞についての資料は、現在までに一点を除いてほとんど確認できていない。そもそも風流という芸能についての研究は民俗芸能の視点から取り扱われることが多く、画証資料の研究と共にその肉体的表現に重きをおかれていた。そこで今回は、文字資料より歌われた内容を確認し、この派手で人の目を驚かす芸能の違う側面を見ようと考えた。その結果、その歌詞の内容は意外なほどに卑猥なものであり、「風流」の詞章は猥歌の系譜にも位置づけられるものだと判明した。このため今発表では猥歌の変遷にも触れることとなった。「洛中洛外図」の検討が猥歌へと続くこともあるという、この変遷自体に研究の妙味を感じる次第である。

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