参加した学会等のタイトル:
北京日本学研究センター設立20周年シンポジウム

開催場所:
北京

開催期日:
平成17年10月14日(金)から10月16日(日)

参加した学会等の概要:
主な参加セッション

*「ジブリアニメの力」

*趣旨:
現代日本文化の中でもっとも発達したジャンルの一つである日本アニメが欧米では高いブランド性を誇るまでになっている。アニメーションアーティストである宮崎駿と高畑勲が製作した「となりのトトロ」(1988)、「もののけ姫」(1997)、「千と千尋の神隠し」(2001)等名作を次々と発表している。これらは日本アニメの技術性と芸術性を表しているといってよい。以上のことからスタジオジブリの歩みを通してジブリ作品の魅力と現代社会に於ける価値を見直す。

*パネラー発表

 ・王衆一 『複数の軸から見る宮崎駿のアニメとその共同体想像』
戦後60年、日本アニメの発展のプロセスは、それぞれの時代と密接な関係がある。時代意識はその作品に浸透している。宮崎駿はそれらを消化することによって新しいユートピア像を時代に捧げている。そしてそれは社会主義の世界観でもある。

 ・米村みゆき 『ジブリ映画-媒体としての宮沢賢治』
ジブリ作品、特に宮崎駿作品は、宮澤賢治という媒介項を導入することによってジブリ映画に底流するある側面を構築している(例:「となりのトトロ」は「どんぐりと山猫」、「千と千尋の神隠し」にのシーンが「注文の多い料理店」を引用)。また、かつては文学にメディアとしての力があった。現在では世界に発信うる日本文化はアニメである。

・スーザン・J・ネイビア 『欧米のファンたちが見たスタジオジブリのアニメの魅力』
スタジオジブリの作品は、その描写の素晴らしさと物語の豊かさで幅広い層にアピールすることができた。日本だけでなく世界中で宮崎駿ファンがこの10年で驚くほど増加した。その原因は、作品の描写の素晴らしさと物語の豊かさ以外に、様々な事柄が考えられる。その一例として複雑で暗い現代社会に於いてファンタジーの重要性が改めて認識され、より多くの人々に求められるようになったことであろう。ディズニー作品は勧善懲悪として描かれているが、宮崎作品は決してそれではない。ディズニー作品よりむしろ複雑で奥深い意味を持っている世界観がある。また、道楽的に柔軟な考え方も、魅力の一つである。


学会参加以外の日程について:

資料調査先:北京第一档案館、北京国家図書館、北京大学図書館

成果:
清朝末期に於ける中国人日本留学生に関するものを調査した。価値の高い資料蒐集できたが多くは紛失や資料再編作業中などでなかなか検分できなかった。また、時間の関係から希望している档案館にいけなかったことも残念である。

学会等に参加して得られたこと:

今回の北京日本学研究センター設立20周年記念シンポジウムに参加することによって、以下の成果が得られた。

  • 改めて北京日本学研究センターは人材育成、学術交流、中国に於ける日本学研究の発展に寄与したことがわかり、数多くある我国のODA政策の中でも成功しているといえることがわかった。
  • 内外約160名の多種多様な分野からの研究発表があり、多角的視野からの研究姿勢の必要性を改めて実感させられた。
  • 参加したセッションで積極的な議論ができた。例えば小生が参加したセッションの一つである「日本文化分科会Ⅱ」に於いて「日本は集団主義」と断定した研究者に対し「組織主義」ではないかという論が出たことによって、日中韓の語彙観の差を改めて感じさせるものであった。時局柄、日中間の交流が滞りがちな面もあるが、このような積極的な学際的議論ができ大いに勉強になった。
  • 懇親会でも多くの中国人研究者と知り合い、来年開催されるシンポジウムの参加や共同研究を行う話もできた。
  • シンポジウム終了後の調査研究についての情報と協力が得られた。
  • 今回の学術交流から平和の大切さをしみじみ感じた。
  • 小生の博士論文研究は『明治期の中国人留学生教育-嘉納塾から宏文学院を中心とした日本語教育から観た留学生教育』である。中国で開催された学会であるから、注目が高い分野であったが故に、知り合った中国人研究者から小生自身が考えられない発想の指導を得られたことは。貴重なものであった。また、今回の学術交流全体が、今後の小生の研究に大きな影響力があったことはいうまでもない。


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