参加した学会等のタイトル:
ヨーロッパ日本研究協会日本研究会議

開催場所:
ウィーン大学

開催期日
平成17年8月31日(水)~9月3日(土)

参加した学会等の概要:

今回のヨーロッパ日本研究協会日本研究会議では、申請者は、美術・演劇分野と古典文学分野の二つを中心の聴講した。事前にはその他の分野にも聴講を予定していたが、後悔されていたプログラムと実際のプログラムの内容に変更があり、聴講ができないものも数多くあった。

また、当初は大学院生のワークショップへの参加も予定していたが、非常に少人数のワークショップであり、初日からの議論を積み重ねており、自分に関連する分野や興味のあるセッションに聴講のみの参加には不向きな内容であった。また、ワークショップの会場すら、一般聴講者には公開されておらず、ワークショップ発表予定者以外には参加しにくい状況であった。

本会議では、全部で9つのセクションが設定された。基本的にはヨーロッパ在住の日本文化研究者であるが、日本で研究を行う研究者も発表を行った。ヨーロッパ在住の研究者の中には、大学院生や博士号を取得した直後の発表者も多く、そのために学会発表に慣れていないためか原稿を早口で素読するスタイルが多く、英語のネイティブスピーカーですら内容を十分には把握できないために、質疑応答が十分でない発表も少なからず見受けられた。しかし、セッションとセッションの間にの休憩時間、昼食の休憩時間が比較的長く設定されており、発表者と聴講者はより深い議論をその時間を利用して行うことができた。

学会全体の傾向としては、沖縄などのマイノリティの存在に関する議論が、領域を超えて取り上げられているようである。それから「記憶」というキーワードが領域横断的に私用されている。申請者もマイノリティに感心を持っていたが、領域が横断しており、先述したようなプログラムの変更のために聴講が不可能であった。このように他の領域にも共通するテーマが存在する場合、領域を横断した特別セッションを設けることも必要ではないかと思われた。

私が主専攻とする、芸術演劇分野においては、古典と現代、東洋と西洋の交じり合いに突いての関心が高いということが分かった。また、コーディネータが能楽を専門とするために、能楽に関する発表が多く行われた。

学会等に参加して得られたこと

学会発表を聴講することによって大きく三つの成果を得ることができた。

まず、人的ネットワークを広げることができた。申請者は博士論文において、古典演劇と現代文化の関係について考察を行おうとしている。しかし、このような視点は、現代演劇研究者は行っていても、古典演劇研究者が行うことは少ない。しかし、この学会に出席することによって、古典文学の分野で筆者と同じ視点で研究を進めている研究者に出会う事ができた。彼の発表終了後に様々な意見交換を行うことができ、帰国後も情報交換をすることを約束し得た。

次に、申請者と同テーマで、異分野ではどのように研究が進められているかを知ることができた。日本においては、音楽、茶道などの研究が演劇研究と同じ場で議論するのは、芸術史研究会のみである。そこでは、歴史学の支店が強く、社会学的アプローチはあまり行われない。その点にておいて、申請者のテーマとの接点が少ない。しかし、今回の学会では、音楽、茶道の分野において、同じテーマの研究者と接触し、議論を行うことができたことが大きな成果となった。具体的には、申請者は、現代演劇の創造者が古典演劇を利用する場合、古典演劇をどのように選び取るかについて考察を行おうとしている。音楽においても、伝統芸能を選び取る場合に隔たりがあり、その傾向は「日本人のsnobismが影響する」という視点が示された。このような明確な指摘は演劇分野の研究を進める上でも重要な方向性が示されたものと考える。茶道についても同様の意見交換を行うことができた。

  最後に、美術演劇分野において、今回は伝統(古典)と現代、西洋と東洋のコラボレーションについて言及する発表が多かった。これらのテーマ設定が多いことを知ることによって、申請者が博士論文で設定しているテーマが日本の芸術・演劇文化を理解する上で重要なアプローチであることが改めて確認された。その上で、今回の発表では、コラボレーションがどのように(how)行われているかの問いかけばかりであったが、何故(why)そのコラボレーションが行われたのかについての議論が行われていないことが改めて分かった。それは、海外在住者の資料的制限でもあろうかと思う。これが一番の成果であったと考える。

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