「戦後日本における『風流夢譚』事件の思想史的研究」が博士論文研究テーマです。「風流夢譚」事件とは、深沢七郎が『中央公論』1960年12月号に発表した「風流夢譚」という小説に端を発する言論弾圧事件を指します。同小説中の天皇一家処刑の場面に憤激した右翼少年が中央公論社社長宅で殺傷事件を起こし(嶋中事件)、1960年の浅沼刺殺事件、1961年嶋中事件、次ぐ同年『思想の科学』天皇制特集号廃棄事件といった一連の恐怖の連鎖の結果、戦後日本における天皇制批判のタブー形成を決定的にしたのが「風流夢譚」事件です。博士論文では、天皇制論議のタブー化形成過程、政財界と右翼勢力と言論界の力学構造、「論壇」の変容の枠組みを視座に据えながら、関係者の聞書きと資料発掘を重視して同事件の全体像の実証を目指します。
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