学生支援相談員紹介

  【学生支援相談員


【前期】


根津 朝彦 日本歴史研究専攻(国立歴史民俗博物館)
  任期:平成18年5月1日~平成18年9月29日
  E-mail :nezu
  1. 博士論文研究の概要
   

 「戦後日本における『風流夢譚』事件の思想史的研究」が博士論文研究テーマです。「風流夢譚」事件とは、深沢七郎が『中央公論』1960年12月号に発表した「風流夢譚」という小説に端を発する言論弾圧事件を指します。同小説中の天皇一家処刑の場面に憤激した右翼少年が中央公論社社長宅で殺傷事件を起こし(嶋中事件)、1960年の浅沼刺殺事件、1961年嶋中事件、次ぐ同年『思想の科学』天皇制特集号廃棄事件といった一連の恐怖の連鎖の結果、戦後日本における天皇制批判のタブー形成を決定的にしたのが「風流夢譚」事件です。博士論文では、天皇制論議のタブー化形成過程、政財界と右翼勢力と言論界の力学構造、「論壇」の変容の枠組みを視座に据えながら、関係者の聞書きと資料発掘を重視して同事件の全体像の実証を目指します。

  2. 日本歴史研究専攻(国立歴史民俗博物館)活用方法
     歴史学(古代、中世、近世、近代、現代史)、考古学、民俗学、情報資料学の主に4分野に渡る広範囲な指導を受けられます。ご自身の研究テーマに隣接する研究者や院生が国立歴史民俗博物館にいれば、喜んで仲介させていただきます。ご関心のある企画展の開催期間とあわせて歴博へ訪問され関係者と交流を深めるといったこともできますので、共同研究や所蔵史料などの情報照会含めてお気軽にお問い合わせ下さい。私自身であれば日本近現代史(特に戦後史)に関する支援をさせていただけるのではないかと思います。

  3. 「総合日本文化研究実践教育プログラム」について
     学際性の形成というのは、相互の問題意識の交換、つまり耳学問のコミュニケーションがどのくらい活発に開かれているかにかかっていると考えます。従って、本プログラムによる人との創造的な出会いが広く生まれることを期待していますし、私自身、積極的にチャンスを利用できればと思っています。
また、ともすればナショナルなものへと棹さしやすい時代状況において、本プログラムが普遍的かつ歴史的な研究評価に耐えられるよう批判精神の通底した企画事業になることを希望しています。


西山 剛 日本歴史研究専攻(国立歴史民俗博物館)
  任期:平成18年5月1日~平成18年9月29日
  E-mail :nishiyama
  1. 博士論文研究の概要
     「前近代社会における四府駕輿丁論」というのが博士論文で取り組んでいるテーマです。この「四府駕輿丁」とは朝廷機関である左右近衛府・左右兵衛府(四府)に属し、行幸に際して、天皇が乗る輿(鳳輦)を担ぐ組織です。また鎌倉初期から商業活動にも従事し、室町期を通じて大きな商人集団となり、近代初頭までこの組織は存続します。
  極めて長いスパンで活動を見せるこの組織を素材に、中近世移行期における商業界の実態把握、鳳輦や神輿への勤仕という神聖な職務を担う組織が各時代の影響下でどのように変容・変質したのか、を捉えようとしています。また「担いで移動させる」という行為そのものの持つ社会的な意味合いも併せて考えています。

  2. 日本歴史研究専攻(国立歴史民俗博物館)活用方法
     博物館と研究所という二つの顔を持つ機関です。膨大な展示資料と、さらに膨大な所蔵資料は歴史学だけでなく国文学、美術史、民俗学、人類学、宗教学など人文科学全般に関わるものです。専攻する分野に関わる資料が必ず「れきはく」にはある筈です。
  また、「れきはく」の常設展示や毎年複数回行われる企画展示は多様な視点で構成されており、ここからも豊かな情報を抽出することができるでしょう。是非、一緒に展示をまわりディスカッションや研究会という形で、意見を交わしていきたいと思っています。

  3. 「総合日本文化研究実践教育プログラム」について
     「総合」という言葉は、散漫で視点の定まらないものに関して使われることがあるようです。
  このような悪しき「総合」にならないために、いつも核となる分析視点を意識しなければならないと考えています。本プログラムは、様々な核を持った方々と交流し、協同の中で新たな核を獲得するためにあると思っています。そのために多角的な視点で企画を立案し、自身の研究視角を磨いていきたいです。

伊藤 潤 日本文学研究専攻(国文学研究資料館)
  任期:平成18年4月1日~平成18年9月29日
  E-mail :ito
  1. 博士論文研究の概要
     聖徳太子への信仰から発生する、文学・聖教テクスト、宗教言説、芸能における、中世的展開。
聖徳太子への信仰と伝承は、中世において多様な展開を見せる。文学テクストであり、かつ宗教テクストでもある「中世太子伝」。「中世太子伝」および、それ以前の太子伝承を
下敷きとして成立する諸芸能。聖徳太子を頂点に戴いて成立する様々な秘説。これらは、聖徳太子を軸として、他の文芸とも密接に関連し合いながら、中世という時代に生き生きと躍動し、拡張していったといえる。聖徳太子への緒言説とテクストを読解することで、中世の文芸・精神世界の一端を解き明かしたい。

  2. 日本文学研究専攻(国文学研究資料館)活用方法
     館所蔵の典籍類と共に、マイクロフィルム化した国内外の公共・私設・大学図書館および文庫・研究所所蔵典籍類の閲覧・複写(一部不可の典籍あり)が可能である。加えて、
日本文学研究に関する研究書・雑誌を揃え、日本文学・文化研究に寄与している。
当専攻の支援相談員としては、他専攻の方々が、基盤機関である国文学研究資料館所蔵の典籍の利用される時に、また、当館で行われる展示・研究会・シンポジウム参加の際、最大限のサポートが出来ればと考えている。

  3. 「総合日本文化研究実践教育プログラム」について
     昨今、改めて、従来の学問体系の見直しと、相互交流から産み出される新たな視点が求められている。他専攻との交流によって、日本文学への研究それ自体とともに、交流した様々な専攻(研究)にも、多くの得るべきものがあることを望んでいる。