1.神戸情報大学院大学の専門職大学院の捉え方
本大学院の捉える専門職大学院の特色とは、実務教育を行うことにあり、社会の求める高度で専門性の高い人材を養成することが専門職大学院の使命と考える。具体的に言えば、一般大学院が特定の技術(特に1つの技術)を深く追求することに対して、専門職大学院は特定の職業に必要な要素技術をまんべんなく組み合わせて教育していくイメージであると説明していた。図で示すと、以下の◎が特に一般大学院で中心になる例で、もう少し広く見れば、横の要素技術Aについて追求するのが一般大学院であるのに対して、専門職大学院は、例えばxx職に該当する技術全般を教育している。
要素技術 |
xx職 |
yy職 |
zz職 |
A(プログラミング) |
v |
◎ |
v |
B(ネットワーキング) |
v |
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v |
… |
v |
v |
|
… |
|
v |
v |
2.神戸情報大学院大学の教育
上記の考え方に基づき、本学は経済産業省が2002年に発表したITスキル標準(ITSS)に基づく教育を行っている。これは職種ごと、レベルごと(初級・中級・上級)にマトリクス状にIT技術者に必要な技術を示したものである。各マトリクスについては詳細項目が定められており、このITSSに基づいた教育が本学の教育である。
このことからもわかるように、神戸情報大学院大学はIT技術者としての確立と出口での就職の手堅さを専門職大学院としての目標と定めている。このように技術にターゲットを絞っていることは、マネジメント力を重視する他の専門職大学院との違いである。これは大学院レベルでの高度な技術、即戦力性という強みと同時に、専門学校との差異化の難しさという弱みも抱えている。
しかし、今後、情報系専門職大学院が増える中で、教育のゴールを特定の職業(ITアーキテクト、プロジェクトマネージャー、ITスペシャリスト、ソフトウェアディベロッパー)に絞り、応用可能な技術力に特化したOSS(open source software)を活用した教育は、専門職大学院の中での特化の一つの在り方でもある。
3.教育上の工夫
本学にはカリキュラム構成とフォローアップ体制に特徴がある。本学には文系のキャリアチェンジ志望者が多く、IT初心者も多い。彼らに対しては、入学前教育やeラーニングを通じた補習教育により、大学院の中心となるレベルの教育についていけるようになる体制を持っている。また、学生に対する教員数が多く、メンター的な役割を担う助教らの役割も大きい。6割を占める実務家教員の高度な教育に学生が応えられるのは、こうしたフォローアップ体制があることの影響力が大きい。
また、カリキュラムを1年6期に分け、講義→演習→実験を1クールとして、1つ1つの内容を実務レベルまで引き上げてから次の内容に入る工夫がなされている。
本学のカリキュラムの特徴としては、
- 積み上げ型:知識の完全習得、企業研修に近いカリキュラム
- OSSが教材:技術の根幹部分の修得、ハイレベルな技術者養成
- 実務家による実践的指導(実務家6割):即戦力となる知識やノウハウの修得
- ITの応用技術とmanagement & solutionの2方面の教育の実現:修了後に広がるキャリアパス
という点が挙げられる。
また、モチベーションの高い学生を入学させるために、IT基礎科目や英語、数学などの学科試験を取り入れている。
4.神戸情報大学院大学が目指す人材像とその理由
本学はITSSのレベル7段階のうち、中級であるレベル3を到達目標と設定している。これは、レベル3からが人材の需要供給にギャップがあるからである。むろん、レベル4以上にはさらなる人材不足があるが、こうしたレベルは大きなプロジェクトの経験など高度な実務経験が欠かせない。そこで、神戸情報大学院大学では、インターンシップや学内で可能な小規模プロジェクトで育成可能なレベル3に焦点を当てている。つまり、学校教育のみで可能な最高レベルの技術者養成という人材輩出機能を専門職大学院のミッションと考えているのである。 |