梅定娥(国際日本研究専攻)
1.事業実施の目的 【h.海外フィールドワーク派遣事業】
  

「満洲国」に関する文学研究資料の調査及びフィールドワーク

2.実施場所
  大連図書館、遼寧省図書館、長春市図書館、ハルピン市図書館等
3.実施期日
  平成19年8月2日(木)~平成19年8月14日(火)
4.事業の概要
 

 「満洲国」文学研究には、いちばん肝心なことは資料の掘り下げと収集である。当たり前のことであるが、資料調査しなければこの研究は全く行なわれないのであう。そのため、私は中国東北地方の各図書館を訪れ調査する企画を立てた。
 また、文学研究であるため、作家たちの活動した時代背景などは、正確に把握されなければならない。その時代背景(社会情況、政策など)についての調査が欠かせないものと思う。これらの調査には、書類調査も必要であるが、現地を訪れ、その土地を自分の足で踏み、自分の目で見、自分の耳で聞くことも同じように大切であると思う。
 このような考え方に基づき、私は、先ず中国東北地方の各図書館に入り資料調査を行なうことにする。図書館は、場所によってそれぞれ対応の仕方が違う。ずいぶん使いやすくなってきたところもあれば、相変わらず利用しにくいところもある。ことに、同じ時期の資料でありながら、コピーしてくれるところもあれば、見せるしかしないところもある。出来るだけ多く見せてくれるようにと図書館側と交渉しながら、これらの資料が一日もはやく研究者に利用されやすいようにと願っていた。
 それから、市内を踏査する。今度は、かつての租界地の関東州と「満洲国」の政治中心の新京(長春)、それから南満中学堂の所在地瀋陽の街を歩いてみた。
 長春駅前は、かつての満鉄の附属地で、元大和ホテル(春誼賓館)などの建物に「満洲国」の面影が残っている。駅前から南に行ったら、当時「満人」(中国人)の居住区に入る。現在は都市建設のため古い建物はどんどん取り壊されているが、いくつか孤立に聳えている建物から当時中国人の生活状況を推測することができる。
 市内踏査の後、健在している「満洲国」文学者のインタビューを行なう。周知の通り「満洲国」文壇では、「文選派」と「芸文志派」と二つの大きな流派が存在していた。この二派には対立したところがあるため、同じ人や事に対しても、双方は真反対の意見を持つことがある。このような理由もあって、私は元「芸文志派」と「文選派」のメンバーをインタビューすることに決めた。
 「満洲国」の経験者がだんだん少なくなって来ているため、この人たちの頭に刻まれた「満洲国」文学に関する記憶は、図書館に収蔵されている資料と同等価値がある。いや、その記憶はまだ実物になっていないため、もっと貴重だと思われる。
 瀋陽で元「文選派」作家・詩人李正中氏と「満洲国」有名な女性作家朱氏を訪問した。長春では、元「芸文志派」作家・詩人・『易経』研究者李民氏をインタビューした。
なお、満洲研究者呂元明氏への訪問と、満洲文学研究者李春燕氏への電話インタビューなども行なった。そのほかに、他の満洲文学関係者の訪問も実施した。
  哈爾濱では、元「北満」作家のインタビューなどを予定していたが、連日の過労働のためか、体が疲れてしまって行なう気力が無くなってしまった。これは、今非常に残念に思っている。これからチャンスがあれば、ぜひ一度訪問したいと思っている。

5.本事業の実施によって得られた成果
   
6.本事業について
   我々の院生の研究、特にフィールドワークや資料調査が必要な研究にとっては、イニシアティブ事業は非常にありがたくて、欠かせない存在と思われる。この事業をいかに有効に利用して、その最大限の作用を発揮するかは、我々利用者の考えるべきこととなる。フィールドワークを通して、我々は、必要な資料調査を行なっただけではなく、研究手法の向上と、社会や歴史の勉強も出来た。ここで、もう一度イニシアティブ事業に感謝する。