本事業は、報告者が現在、研究を進めているタイ東北部の土器生産地ダーン・クウィアンの社会変容に関して、文献資料および現地調査によるデータの補充を目的に、実施した。それぞれ、タイ国の首都における文献資料収集および、東北タイナコンラーチャシーマー県ダーン・クウィアン地区における聞き取り調査をおこなった。
バンコクにおける文献資料収集の実施
今回の派遣事業の間、特に文献資料収集により多くの時間を費やした。タイにおける文献資料の収集は、時間がかかるため、今回のようにまとまった時間を、文献収集にあてたことは効率がよかったといえる。
報告者は、本調査でタイに滞在した際にも、文献資料収集をおこなっていた。今回は、帰国後日本にて研究を進めた結果をふまえ、新たに文献を補充した。具体的には、タイ国立図書館およびタイ国立公文書館、チュラーロンコーン大学付属図書館、タマサート大学付属図書館、シラパコーン大学付属図書館、そしてタイで最も歴史の古いパトゥムワン高等職業訓練学校をおとずれて、文献資料収集につとめた。
また、バンコクにある主要出版社の書籍を購入するため、書店をまわった。これにより、以前タイで調査をしていた際に、手に入らなかった本を補充することができた。
バンコクにおけるタイ人研究者との面談の実施
海外で研究をする者にとって、現地の大学の研究者や教員のサポートは不可欠なものである。彼らは調査時のサポートのみならず、現地の情報や、研究の動向などを提供してくれる、非常にありがたい存在である。
今回の派遣期間中、バンコクにて、以前から交流のあるタイの大学教員とお会いすることができた。その際、報告者の日本での研究の途中経過を報告し、それについて助言をいただくことができた。特に、タマサート大学の民族考古学専門の先生には、報告者と同じ調査地で研究していたアメリカの文化人類学者を紹介してもらうことができた。これらの人的交流は、今後の研究に活かすようにしたい。
ナコンラーチャシーマー県、ダーン・クウィアン地区における補足調査の実施
今回は現地調査に当てられた時間は、限られていたために、キーパーソンとなる特定人物にインタビューをおこなった。その中の1人は、筆者の調査地である土器生産地で使われる機械を全て作っている、機械の修理工である。報告者は、彼の作業場に赴き、インタビュー調査をした。本調査の期間中もインタビュー調査をしたことがあったが、当時、報告者は機械に関する知識も乏しかったために、インタビューの内容に対する理解が不足していたと感じていたからである。今回は、それらを含めてインタビュー調査をおこなった。
また帰国から1年の間に、調査地付近の様相がどのように変わったのか、全体を把握した。以前、報告者が滞在していたときには、まだ整備が終了していなかったラチャパット大学付属博物館を見学する機会があった。地元の小学生たち大勢が見学に訪れており、タイ政府が推し進める地域文化の育成が、着実に展開していることを肌で感じることになった。
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