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海外学生派遣関連事業 研究成果レポート

キムホンソク(日本歴史研究)

1.事業実施の目的

最新の韓国土器編年の傾向と年代の理解、家畜の形質学的な存在の確認

2.実施場所

第32回韓国考古学 全国大会、国立中央博物館、国立済州博物館、中央文化財研究院、慶南考古学研究所、国立金海博物館、釜山市立博物館

3.実施期日

平成20年11月5日(木)から平成20年11月16日(日)

4.成果報告

●事業の概要

今回の事業の目的は最新の韓国土器編年の傾向と年代の理解、家畜の形質学的な存在の確認であった。

事業は大きく二つに分けられ、一つは韓国考古学全国大会の参加と実際の出土遺物の観察を行うことだった。

最初に韓国考古学全国大会は一年に一回行われ、主題を決めて議論を行う。今年の主題は様式論であり、韓国で出土する土器の形式論についての考察が行った。学会は二日に渡って行い、一日目は各研究者の様式論に関しての研究発表が行った。二日目は各主題ことの発表が行った。今年は実験考古学の一環として土器の調理に関する基礎的なデータの蓄積と調理痕跡の分析に関する発表があった。それとともに、遼東半島の青銅器文化について発表も行われた。さらに、今年の発掘調査の中で、注目される遺跡についての紹介も行われるので、今の考古学の話題や発掘の状況を理解する機会が得られた。考古学全国大会の参加は考古学の基礎である編年の理解を高める場であり、資料調査を行う際にどんな遺跡が発掘され、動物遺体が出土したりする遺跡の確認ができる場であった。

今まで韓国ではブタという家畜の存在が認められず、ウシ・ウマ特にウマについての研究が多く、生業に多く関係するブタの研究はほとんどなかった。このような状況で今年は韓国のブタの存在についての調査を進めてきた。調査対象になった遺跡は三韓時代(BC3~AD3)の遺跡で勒島遺跡と楽民同遺跡である。調査を行った機関は中央文化財研究院、慶南考古学研究所、国立中央博物館である。三つの機関の動物遺体の中で、イノシシとして報告されたものの計測や写真撮影などの観察を行い、この時期のブタが含まれている可能性について注目して行った。今回の調査のデータは以前のデータと合わせて韓国三韓時代の家畜の利用状況を分かる情報になった。

さらに、済州博物館ではBC3世紀前後の住居地から出土した資料の観察ができた。韓半島では青銅器時代の動物資料も少なく、住居地から出土する動物遺体もほとんどないのが現状である。その現状のなかで済州博物館での調査はもっとも貴重な機会であった。

資料調査以外には国立金海博物館と釜山市立博物館を見学した。当時、二つの博物館は企画展が行われ、見学をした。国立金海博物館では新石器時代の最古の船が出土した遺跡の遺物が展示されていた。この遺跡は動物骨の出土も多く、今でも完全にはわかっていない新石器時代の状況を理解できる遺物が多かった。釜山市立博物館では韓国と日本の交流についての企画展示が行われた。昔から九州地方との交流は多く、現代までの時期を眺める展示であった。

●本事業の実施によって得られた成果

今の韓国には先史時代や歴史時代には家畜はウシとウマ、イヌが存在している。一番古い家畜としてイヌの存在は新石器時代から認識している。さらに、ウシやウマは他の研究でその存在を認識している。特にウマの場合は馬具や鉄器の研究で注目し、韓国での存在歴史を注目している。しかし、ブタについてはイノシシとしての報告は多いが、ブタが存在しているかについては考察が行われなかった。この状況で今まで韓国でブタの存在について形質学的あるいは科学的な研究はあまり進んでいない。最近になって、DNAからの研究は始まっているが、数少ない。そのなか、今回の調査では韓国で歴史時代(BC3からAD3の三韓時代)におけるブタの存在についての手掛をつかめることであった。ユローパでは歯や骨の色々な部位の計測による分布の変化からブタとイノシシを見分ける研究行われってきている。この研究は日本や中国も行っている。その結果で日本には弥生の始まりからブタの存在が確認された。さらに、中国では新石器時代の遺跡から確認され、韓半島を除いた東アジアでブタの存在が知られている。このような現状で韓国にも先行研究を適応した結果、先行研究と同様な結果が得られた。計測結果以外にも様々な形質的な変化が起きた骨が見つかった。下顎骨の歯の並びが曲がったものや日本でブタとして認定される第一頸椎と同様なものなどが韓国の遺跡でも確認された。さらに、家畜化されると若い年齢が多くなることも知られており、今年中のイノシシの調査でも成獣になれずに殺された遺体が多く確認された。このような様々な結果から恐らく今まで存在が分からなかった韓国のブタはBC3世紀には存在したといえる可能性が高くなった。さらに、韓国でブタとイノシシを分ける基礎データが揃える調査であった。

今回のブタの研究は博士論文の作成に大きな役割を果たすと考えられる。博士論文では韓国の家畜について扱うつもりであり、ブタの存在がいつまで遡れるかを研究するにはやはり新しい時代のものからやるべきだと考える。このような意味で今回の調査が大変大切であった。さらに、骨は出土しても骨の自身が年代を示してない。骨と共版する遺物、特に土器から年代が決められるので、考古学大会での土器の発表や青銅器編年や文化についての発表はもっと年代の理解を高める機会であった。

今回の調査の内容中、韓国のブタのデータは今年進めてきた研究で、今回の結果と合わせて、11月に開かれた第12回動物考古学研究会にで「韓国のブタについて」の題目で発表し、今後には研究論文として投稿する予定でもある。