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国内学生派遣事業 研究成果レポート

豊増 佳子(メディア社会文化専攻)

1.事業実施の目的

研究テーマについて、研究結果の発表に向けて成果をまとめ、発表をした。 この学会は、研究のフィールドとしている病院と関連の深い学会であり、本博士研究において、アクションリサーチを援用している研究の実施に際しては、必要不可欠の参加だった。

また、この学会は、看護に関する教育を検討する研究であり、看護学会での発表は本博士研究において、看護の視点からの意見を得る非常に重要な機会となった。さらに、現在の看護関連の研究動向も知ることができた。他研究者から得られた知見を、今後の博士論文に活用していく予定であり、本大会で得た情報からも、論文構成、内容の再検討を加えて、質向上を図る予定である。

2.実施場所

沖縄コンベンションセンター(宜野湾市真志喜)

3.実施期日

平成21年2月6日(金)~平成21年2月9日(月)

4.成果報告

●事業の概要

1.派遣先機関・学会:第23回 日本がん看護学会 学術集会

2.目的:研究成果発表のため

3.発表テーマ:新人看護師を対象とした麻薬準備場面を含むシナリオを用いた多重課題シミュレーション研修の構築と評価

4.学術集会開催概要:日本がん看護学会は、がん看護に関する実践、教育、研究の発展と向上に努めることを目的として1987年に発足し、会員数は3,176名(2008年4月1日現在)である。2006年に20周年を迎え、がん専門看護師や認定看護師の輩出やその後の継続教育等にも力を注いでいる。そのため、専門職者としての生涯学習の機会および研鑽の場として、がん看護の発展・向上のために前進する場として貢献している。

学会活動としては年1回学術集会を開催し、本第23回学術集会においては、教育セミナーや教育講演が多く企画された。教育セミナーでは、「医療におけるヒューマンエラー対策の考え方」について、河野龍太郎(自治医科大学医学部メディカルシミュレーションセンター)氏の講演があり、多重課題に関する研究への基盤となる情報を得られた。

さらに、他の教育講演では、「リンパ浮腫のケア」「がん患者の栄養管理」「がん体験者の語りを結ぶ」「倦怠感のケアとアセスメント」など、がん看護実践には欠かすことのできないテーマが選定され、有益な情報収集ができた。中でも、「がん体験者の語りを結ぶ」については、語りについての情報提供のあり方について多くの学びを得て、専攻であるメディア社会文化についても、情報やメディア活用方法や注意点など多くの学びを得た。

●学会発表について

【目的】新人看護師を対象者とした多重課題シミュレーション研修を企画・実施・評価し、今後の研修の課題を明らかにする。

【方法】対象者:がん診療拠点病院に勤務する新人看護師で、研究協力への同意が得られた者。研修および調査の時期:2008年2月。研修の企画と運営:1.シナリオ作成;新人看護師が日常業務場面で直面している多重課題に関する予備調査に基づいて作成。2.研修プログラムの企画と実施:シナリオに関する情報の提示→提示情報に基づく行動計画の検討(個人/グループワーク)→シミュレーション演習(個人)と演習場面のVTR撮影→VTRに基づくリフレクション(グループ/全体)の流れで実施した。3.データ収集:研修前後に、看護行動に関する必要性の認識・自己能力評価、およびシナリオに提示情報に基づいて立案した行動計画を調査した。さらに研修後に研修目標達成度に関するアンケートを実施した。分析方法:記述統計および内容分析。

【結果】対象者24名。看護行動に関して(計画の修正を常に行って行動する)必要性の認識が研修後に高くなった。自己能力評価では(チームリーダーに報告する)(患者全員よりもまず自分の担当患者について考える)が研修後に低くなり、(行った1つ1つのケアの振り返りや確認・評価をする)は研修後に高くなった。研修前後で立案した行動計画は、研修後には記載内容が具体的かつ詳細になり、チームメンバーの協力を必要時には得るなどの、対象者以外の医療者が登場する計画になっている傾向があった。研修後の研修目標到達度は、約80%が良好で、演習場面のVTRを見ることで自分の行動や傾向を客観的に確認できたと評価していた。

【考察】新人看護師は、優先順位を考えて効率的かつ安全に動くことの重要性と難しさを実感するとともに、自己の傾向について気づくことができていた。シミュレーション場面のリアリティや、リフレクション効果をより高める方法の検討が今後の課題である。

【得られた質問やコメント内容】がん患者の看護について、看護の基礎教育の中で学んだ内容について学生からデータを収集して研究を行っている研究者からコメントを得た。看護の基礎教育の中では、心身のケアを中心に学んでいるようであるが、実際に働き始めたときには、私の研究内容のような、麻薬管理など、がん患者には不可欠の業務内容についての教育内容も必要になってくると考える。そのため、今後は、このような内容についても考慮した研究を進めていきたいということだった。学会参加は、関連領域の研究者とのネットワーク形成の場としても重要な意味があると考えた。

●本事業の実施によって得られた成果

本事業において得られた知見は以下のとおりである。

1.会議全体から自分の研究領域に対する示唆

がん看護の現状について振り返り、自分の研究テーマと照らし合わせて考えることができた。特に、割り込み業務等の対処やマネジメント方法については、一見業務の効率的な視点や解決策に偏る可能性もあるが、がん看護の中でも、心身のケアにとどまらない教育について、今後も継続して考慮しておくことは重要であると承認をえる機会ともなった。

2.博士論文への示唆

本博士研究は、看護に関する教育を検討する研究であり、看護学会での発表は本博士研究において、看護の視点からの意見を得る非常に重要な機会となった。また、現在の看護関連の研究動向も知ることができた。本大会で得た情報からも、論文構成、内容の再検討を加えて、質向上を図る予定である。

3.研究フィールドである病院との共同研究活動の継続

特に、今後の研究の継続のためにも、研究フィールドである病院との共同研究の活動を継続させるために必要不可欠な機会として、有効に活用することができた。

●本事業について

学生にとって、今後もこのような支援を得られることは大きな場となると考える。このような機会与えられたことに大変感謝している。