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海外学生派遣関連事業 研究成果レポート

キムホンソク(日本歴史研究)

1.事業実施の目的

人骨情報の収集と博士論文試料の観察と採集

2.実施場所

福泉博物館、釜山大学博物館、慶南発展研究所歴史文化センター、木浦大学校博物館、全北大学校、国立全州博物館、国立金海博物館、第33回韓国考古学大会
(学会等の主催団体: 韓国考古学会)

3.実施期日

平成21年10月27日(火)から平成21年11月11日(水)

4.成果報告

●事業の概要

 今回の調査では前半に指導教官との資料調査を行い、後半には学会参加と資料採集を行う予定で調査を進めた。現在、歴史時代の資料中心に研究を進めている。しかし、歴史時代の資料だけでは家畜化の過程を考えるときに、動物利用が家畜の登場によりどのように変わるのが把握しにくく、大筋を把握するためにも、先史時代の資料についての研究が重要である。そのため、現在、韓国の新石器時代や旧石器時代の環境についての研究も進めている。そのなかで、まだ韓国についての資料や情報が少ないため、東アジア全体を考える際、困難であった。それで、今回に旧石器時代と新石器時代の石器や動物骨を観察し、日本との比較、考察を行った。さらに、木浦博物館では博士論文に扱う動物資料の観察を行った。古村里遺跡の資料は現在博士論文に扱う予定であるため、観察と資料の追加採集を行った。共に、勒島遺跡とほぼ同時期の郡谷里遺跡の動物遺体の観察を指導教官と行いことにより博士論文に大きな役立つ情報を得ることができた。後半に参加する考古学全国大会は1年に1回開かれ、今年の目立つ遺跡の発掘情報などが集まる。今年のテーマは戦争考古学であり、その中でテーマ発表として人骨をテーマにした分科が開かれた。現在、家畜の研究をする際、安定同位体分析の結果が人間に近づくことにより、家畜と判断する基準の一つとして活用できるかを研究している。そのため、人骨の情報が必要である。今回の発表は韓国では最初の学際を超えた共同研究であり、その成果を発表する場でもあった。さらに、考古学大会は一年の一回だけ開かれ、発掘情報が集まり、研究者間の交流も活発に行われた。学会参加後は博士論文に使う資料の採集も行った。採集は慶南発展研究院の歴史文化センターにて行った。ここでは二つの遺跡の資料を採集し、博士論文で扱う予定である。 二つの遺跡のなかで、会見里遺跡は博士論文にも扱うが、今年発表した論文で形態から家畜と判断したものが含まれている遺跡である。そのため、形態から家畜と判断した動物について資料採集を行い、安定同位体分析を行うことで、博士論文の資料としてより役立つことを期待し、資料採集を行った。さらに、韓国で最古の家畜としてのウシ・ウマが出土した遺跡の資料を観察することができた。これにより、韓国の家畜史の研究に重要な情報を得られることができた。

●本事業の実施によって得られた成果

 今回の調査のもっとも重要なことは博士論文に扱う資料採集ができたことである。現在の博士論文には五つの遺跡の資料について、科学分析と動物考古学的な観察による、韓半島における家畜化過程について研究を進めている。このような状況で、今回の調査で現在韓国の最古の家畜ウシとして知られている資料の採集ができたことは大きな意味を持つことと考えられる。さらに、今年に韓国のブタについて形態分類による結果を発表した。その中で、直接扱った資料について、再調査し、分析用の資料が採集できたことは、それにより形態分析と科学分析を直接結びつけることができると考えられる。このような研究が博士論文の方法論として用いていることでもある。博士論文の作成において大きな成果を上げることが期待される。
 さらに、今までは歴史時代、特に三韓時代(BC3世紀からAD3世紀)以後の資料を中心的に扱ってきた。これにより、先史時代の資料を扱う機会が少なかった。しかし、今回の調査では新石器時代の動物資料と石器や遺物を観察することができたことで、視野を広げることができた。今回の資料調査は今後の研究にも大きな役割を果たすことが期待できる。
 今まで、この事業を行うことにより、博士論文に用いる試料の採集が行った。現在、前回まで採集した資料の分析を行っている。今回の調査は分析を進めているときに足りないところを補う資料を採集することができた。これによって、博士論文の作成がより進むことができると期待される。
 ともに、韓国での人骨の分析がどのような機関と研究者が共同に行っていることを知ることができたのは今後の自分の研究を広げるときに役立つことになると期待している。