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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

キム ホンソク(日本歴史研究専攻)

1.事業実施の目的

第9回嶺南考古学会・九州考古学会合同考古学大会(テーマ:「日韓考古学の新展開」)参加
遺跡・博物館における資料の調査

2.実施場所

九州福岡市一帯(第9回嶺南・九州共同考古学大会、宗像大社展示館、国立九州博物館、福岡市博物館)

3.実施期日

平成22年7月16日(金)から7月20日(火)

4.成果報告

●事業の概要


 学会への参加と遺跡・博物館における資料の調査を行う。
 福岡市で開かれた第9回嶺南考古学会・九州考古学会合同考古学大会(テーマ:「日韓考古学の新展開」)に参加した。これは日本の九州と韓国の嶺南(慶尚北道、慶尚南道、釜山広域市、大邱広域市、蔚山広域市)地域の考古学会が合同で開催するものある。現在、博士論文で取り扱う資料は嶺南地域の資料であり、この地域の研究者が集まることで、意見交換により博士論文の内容を深めることを図った。
 大会は二日にわたり行われた。一日目は研究論文の発表、二日目は今年の主要遺跡の発掘についての発表がなされた。研究発表は日本側から「LA-ICP-MS分析装置を用いた弥生時代人骨に対する分析」、「東北アジアにおける小形仿製鏡の展開」、「九州の須恵器生産と牛頸窯跡群」の3編、韓国側から「嶺南地域墓域支石墓の変遷および性格」、「茶戸里古墳群の再検討」、「土器の窯詰め方法について」の3編の計6編の発表が行われた。これ以外にポスターセッションとして「勒島遺跡親族関係の検討-勒島Ic地区出土人骨を対象に-」、「宇木汲田遺跡出土ガラス小玉の材質・夾雑物の分析(仮)」が行われた。)二日目の遺跡発表では日本の「田熊石畑遺跡の調査」、韓国の「金泉知佐里遺跡発掘調査概要」と「慶州チョクセム遺跡発掘調査概要」が発表された。
 大会参加後は博物館を中心とした各時期の遺物を調査した。今まで、九州地域の遺物を目にする機会が少なく、九州の文化を知ることで韓半島との交流についての理解をより深めることを図った。
 九州博物館では交流をテーマとした展示が中心であり、九州においての文物交流を知ることができた。特に、ウマを中心とし、韓国、中国を含めた東アジアのウマについての特別展は大変興味深い展示であった。
 宗像大社では祭祀遺跡として有名な沖ノ島遺物が展示されていた。この島では韓半島系の遺物が出土し、韓国との交流の一面を見せている。さらに、この遺跡と大会で発表された田熊石畑遺跡の集団が行った可能性が示されている。 福岡市博物館では福岡が大陸との交流を行う中心としての機能を説明し、福岡の国際交流の変遷をみることができた。

●本事業の実施によって得られた成果


 今回の調査は交流がテーマである。考古学大会では考古学の新展開というテーマで行われたが、韓・日が共同でおこなうことも一つの交流であろう。大会では、人骨の発表は現在の博士論文について一つの手掛りを与えたと考えられる。人骨の地球科学的な分析により、人間の交流を知ることで、動物の移動や拡散もより明らかになると考えられる。さらに、ウマの特別展では馬具の登場から日本への伝播ルートを考えれば、ウマの拡散や伝来の考察に役立つと考えられる。博士論文においてウマについての議論がより明確になることが期待できる。