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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

張 培華(日本文学研究専攻)

1.事業実施の目的

アメリカアジア研究会 太平洋沿岸アジア研究大会  研究成果発表
Association for Asian Studies ASPAC & WCAAS JOINT ANNUAL CONFERENCE 2011

2.実施場所

アメリカ カリフォルニア州 ポモナカレッジ(Pomona College)

3.実施期日

平成23年6月16日(木)から6月21日(火)

4.成果報告

●事業の概要

 現在、8000人以上の会員がいると言われ、世界で最も大きく専門的、学術的な「アジア研究学会」(AAS)に属するASPAC & WCAAS JOINT ANNUAL CONFERENCE 2011(6月17日の金曜日の午前から、19日(日)の午前まで開かれた大会)において研究発表を行った。大会の全日程に参加し、各国の研究者との交流を行い、様々な知識を得た。  第一日、6月17日(金)では、午前(8:30~12:00)と午後(1:30~3:00)、セッション1~4、パネル1~14までが行われた。主な内容は、アメリカにおける日系、中国系アメリカ人の文化、芸術の特徴、日本における対外の政策、東南アジアの諸国の政治、文化、歴史、教育などの課題である。
 第二日、6月18日(土)には、午前(前日同)、午後(1:30~5:00)、セッション5~8、パネル15~33までが行われた。主な課題は、中国の労働市場、教育;インド、バキンスタンとアメリカ;日本語と日系アメリカ人における文化継続の型;日本に関する翻訳、教育などの課題である。
 第三日、6月19日(日)、午前8:30から12:00までは、セッション9~10、パネル34~38までが行われた。主な課題は、アジア系の達成、二世代のアジア系アメリカ人の教育、交錯する文化と言語、戦後の文化と芸術とその結果などである。
 発表者は、世界のいろいろな国から来た研究者である。使用言語は英語である。日本から来た研究発表者は、私(総研大)を含めて、東京大学(1人)、早稲田大学(5人)、弘前大学(2人)、神戸大学(1人)、合計10人であった。

●学会発表について

 申請者の発表は、6月19日(日)午前、セッション10、パネル37の第3番目である。発表スケジュールは次の通りである。

 発表のテーマは、『枕草子』の題名である「枕」の由来についての考察である。従来の「枕」の文字に注意する論考を越えて、跋文における「枕」の出現する背景に注目して考察した。跋文によると、中宮定子と清少納言の会話の中では、内大臣伊周から献上された貴重な紙に対して、何を書くのか定子が悩んで、一条天皇は『史記』を書写したと清少納言に声をかけた、その時、清少納言は「枕にこそは侍らめ」と答えた。そして定子は紙を清少納言に下賜したのである。そもそも書名の「枕」は、跋文の会話から出てきたことが間違えなければ、なぜ跋文には、「内大臣伊周」と「紙」が書かれていのだろうか。つまり「枕」の意味は、「内大臣伊周」と「紙」に繋がるはずだと考えた。
 考察した結果、伊周は「内大臣」官職の間に、紙を定子に献上した。中宮定子が紙を清少納言に下賜した時期は、清少納言が里に居る時期ということも『枕草子』により確認した。この時期、「内大臣」伊周は、都から九州に左遷された時期である。つまり、「内大臣」伊周は左遷の前に紙を定子に献上し、その後、定子は清少納言に紙を下賜した。ということである。
 以上の背景と、白楽天が、左遷された親友元稹からの手紙を受け取る時、「枕」の上に立ち上がって受け取る場面と一致する。この点が本発表の趣旨であった。
 発表時間は20分で、質疑を合わせて30分である。発表に受けた主な質問は、白楽天は元稹から貰った「紙」であろうか、「手紙」であろうか?紙ではなく手紙であるが、注意したい点は、左遷された親友からの情報を得る時、「枕」を出現する背景が一致すると言うことである。司会者Lynne Miyake教授から、詳しくご指摘を頂いて、英語で発表の意欲が益々増し、次のアジア研究学会にも挑戦してみたい。

●本事業の実施によって得られた成果

 英語で国際学会での発表を実現できたことは、何より大切な経験であったとともに自分自身は比較文学の研究者として、日本文学と中国文学を比較して、考察する場合、英語で発表したことにより、問題点を客観的に見ることができた。特に日本古典文学と中国古典文学を比較研究する場合、西洋的研究手法、例えば、社会学、言語学、心理学などの視点から、新たに日中の古典を検討する領域を広げることができる。
 また、世界の各国からの学者の研究発表を集中して聞くことも学ぶ方面からみると、大きな収穫であった。

●本事業について

 文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業に参加させて頂き、自分の挑戦したいことをかなえ、国際学会で多くの学者と交流することができ、大変有益となりました。大学院生として、国際学会に参加でき、文学だけでなく、歴史、社会、哲学、心理学、言語学、経済などの各方面から衝撃的な発表を聞いて、自分の研究視野を刺激的に開いたと実感した。リサーチ・トレーニング事業は、研究のために、確実的、有効的な事業と感じた。