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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

張 培華 (日本文学研究専攻)

1.事業実施の目的

アメリカ東南部アジア研究会 参加 成果発表
The Southeast Conference of the Association for Asian Studies (SEC/AAS)

2.実施場所

アメリカ サウスカロライナ州 Furman University

3.実施期日

平成24年1月13日(金)から1月15日(日)

4.成果報告

●事業の概要

 2012年1月13日から、15日まで、アメリカアジア研究会(AAS)所属の「アメリカ東南部アジア研究会(The Southeast Conference of the Association for Asian Studies (SEC/AAS)の学会が、サウスカロライナ州のFurman Universityの主催よって行われた。申請者は、全日程に参加し、研究成果を発表した。
 本学会、5セッション、35パネルにおける詳細は、次の学会ウェブサイドhttp://www.uky.edu/Centers/Asia/SECAAS/History/index.htmlを参照のこと。
 Japanese Appropriations of Chinese literary Motifs during the Heian Periodというタイトルでパネル発表を行った。

●学会発表について

 申請者は「『枕草子』における漢語表現」を発表した。具体的には、三巻本『枕草子』本文における「三条の宮におはしますころ」章段を中心に考察した。本章段によって、長保二年(一〇〇〇)、五月五日の端午節の頃、皇女姫宮(五歳)の脩子内親王(長徳二年〈九九六〉御生誕)、皇子若宮(二歳)の敦康親王(長保元年〈九九九〉御生誕)のため、天皇から菖蒲の輿、薬玉などが贈られた。その中に、「青ざし」という物があり、清少納言はそれを取って艶なる蓋に載せて、皇后定子に献上した。懐妊三ヶ月の皇后定子は、清少納言の心意を受け取って、すばやく一首の和歌「みな人の花や蝶やといそぐ日もわが心をば君ぞ知りける」と詠んだのである。そして清少納言は「いとめでたし」と賛美した。
 該当する章段の年次は明確で、重要な章段と認められ、さまざまな視点から論じられてきた。しかし、まだ幾つかの問題が残される。
 例えば、清少納言は取った「青ざし」という物は、いったいどういうものなのか。また、定子が詠まれた和歌には「花や蝶や」はどういう意味なのか。これらの二点について、本発表では、次のように考察した。①清少納言が取った「青ざし」というものは、従来の「青麦」で作られた「菓子」ではなく、五月五日の端午節と相応しく青い草のような薬草、俗名である「青刺」という「薊」と指摘した。清少納言が「青刺」を硯の蓋にのせて、皇后定子に献上した。皇后定子は「青ざし」を受けて、すばやく「花や蝶や」を歌に読み込んだ。②万葉から平安まで「蝶」を和歌に詠むことは極めて少ない。定子が和歌に使われた「花や蝶や」という表現は、『白氏文集』の「感傷」の詩句「萎花蝶飛去」を受容したことを発表した。
 また清少納言の読書体験における表記形体の問題や、5月に対する悪月意識についての質問を受けた。

●本事業の実施によって得られた成果

 国際学会での英語による発表は、今回で二回目である。少し進歩はしたが、まだ足りない部分があることを痛感した。本発表のテーマは、すでに日本語で論文を完成しており、発表原稿を英語で読むだけなので、特には難しくではなかった。しかし、他のパネルに参加した際、テーマが違うと、英語の聴解力不足を実感した。この点に関して、今後の総研大文化科学研究科では、英語の授業が開設されば、院生の英語能力の上達に、役に立つと思う。英語で、論文を書く、国際学会で発表できるように訓練する授業があれば、院生にとっては、有意義であろう。

●本事業について

 文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業に参加させて頂き、自分の挑戦したいことがかなえられ、国際学会で多くの学者と交流することができ、大変有益となりました。学会では、文学だけでなく、歴史、社会、哲学、心理学、言語学、経済などの各方面で刺激的な発表を聞いて、自分の研究視野が開いたと実感しました。リサーチ・トレーニング事業は、研究のために、確実的、有効的な事業と感じました。