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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

1.事業実施の目的
阪口弘之教授(神戸女子大学)からの研究指導、赤木文庫所蔵資料の調査
2.実施場所
神戸女子大学古典芸能研究所、大阪大学附属図書館
3.実施期日
平成23年7月25日(月)から7月26日(火)
4.成果報告
●事業の概要
7月25日は神戸女子大学古典芸能研究センターにおいて、同センター長の阪口弘之教授からご指導を賜った。指導内容は、私が演劇研究会5月例会において発表した、草子本『さんせう太夫物語』についてである。
翌26日は大阪大学附属図書館において、赤木文庫所蔵の古浄瑠璃・説経正本4点の書誌調査を行った。
●本事業の実施によって得られた成果
阪口教授のご指導によって、研究発表時には曖昧なままであった草子本『さんせう太夫物語』の本文や挿絵の成立過程についての論考の大枠を決定づけることができた。その内容は「草子本『さんせう太夫物語』に見る寛文期草子屋の活動」という論題で『国文学研究資料館紀要』(第38号)に掲載予定である。また、この論文は、近世前期の古浄瑠璃・説経正本の在り方を論じる私の博士論文を構成する重要な二本の柱の一本を担うことになる。
赤木文庫所蔵資料の中で今回特に注目したのは寛永十年刊の古浄瑠璃正本『とうだいき』であった。慶安三年刊の『とうだいき』は、この本の本文を省略して作られており、その省略方法は明暦二年刊の説経正本『せつきやうさんせう太夫』が寛永年間刊の『さんせう太夫』の本文を省略した方法と同じであるとの先行研究が角田一郎氏によってなされている。昨年、私は「『せつきやうさんせう太夫』の性格-詞章省略の方法」(『伝承文学研究』第60号)において同本の本文の作られ方について角田氏とは異なる結論を下した。従って、『とうだいき』の本文異同にはどのような方法がとられているかの再検討が今後の課題である。
●本事業について
今回、阪口弘之教授のご指導を受けたことは、大変貴重な経験であった。普段の本学での研究活動の中だけでは得られない視点を示唆していただいた。地理的、あるいは経済的条件によって、自力ではなかなかお会いできない研究者のもとを訪れることができるのは、本事業の大きな利点である。