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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

紅林 健志 (日本文学研究専攻)

1.事業実施の目的

2.実施場所

3.実施期日

平成23年7月17日(日)から7月22日(金)

4.成果報告

●事業の概要

 今回の事業では、7月20日および21日の両日にわたり、大韓民国国立中央図書館所蔵の和古書(朝鮮総督府旧蔵本)の調査と、善本(研究資料として価値の高い本)の選定作業に参加し、近世の和歌・和文に関する資料、特に建部綾足に関係する資料5点の書誌調査を行った。
 また、同時に、7月18日(月)に、高麗大学日本研究センターにおいて行われた、九州大学・高麗大学校・国文学研究資料館共催「国際研究集会 in Seoul」および、また同19日(火)に大韓民国国立中央図書館で開催された大韓民国国立中央図書館・国文学研究資料館の「学術交流会」に参加した。

●本事業の実施によって得られた成果

 本事業で調査した大韓民国国立中央図書館所蔵の綾足関連資料の中には、請求記号:古5-44-68『本朝水滸伝』や、請求記号:古5-54-80『とはしぐさ』などがあり、前者は寛政13年(1801)の再刊本『本朝水滸伝』の本文に、文化6年(1812)に改刻した『芳野物語』の序と目録を併せたもので、管見の限りでは他に例を見ないものである。刊行書肆の『本朝水滸伝』を売る際の工夫を伝える資料であり、『本朝水滸伝』の享受史を博士論文における研究課題のひとつとする報告者にとっては、非常に有意義な資料であった。また後者の『とはしぐさ』には全編にわたり、幕末の俳諧師、成祇の書き入れがほどこされており、綾足の片歌説の幕末における享受のありようを明らかにする資料といえる。
 以上2書の調査結果については、順次、研究発表および論文でその成果を報告してゆく予定である。

●本事業について

 日本の古典籍は、日本国外の図書館や博物館にも数多く存在するが、大学院生にはそれを調査する手立ては少ない。今回、この事業を利用することで、韓国国立中央図書館の古典籍を調査することができたのは、報告者にとって非常にありがたかった。