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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

大場 千景(地域文化学専攻)

1.事業実施の目的

フィールドでの口頭伝承の収集および儀礼の撮影、文献資料の収集

2.実施場所

エチオピア南部、ドイツ・ハンブルク大学

3.実施期日

平成23年6月27日(火)から9月6日(火)

4.成果報告

●事業の概要

 今回の調査では、「口頭年代史」を引き続き収集するとともに、前回「口頭年代史」の調査に集中していたために等閑視してしまった、クランの歴史に関して集中して伝承の収集を行った。さらに、調査時期に行われた年齢階梯制度にまつわる通過儀礼に関しても観察およびビデオカメラによる記録を行った。また、エチオピア研究が盛んなハンブルク大学に所蔵されている対象民族であるオロモに関する文献を収集した。

●本事業の実施によって得られた成果

・通過儀礼に関する貴重な映像が得られた。編集を行い、今後映像人類学関連の発表会において映像発表を行うつもりである。

・世代階梯制度を土台としてボラナ社会全体の歴史に関する伝承は、多数収集することができたが、クランに関する伝承は殆ど収集できなかった。つまり、ボラナ社会はクラン単位で歴史を考えてこなかった社会であるといえる。この点について、博士論文の第8章において言及しながら、さらに社会と歴史との関係に関する考察に深度を加えていきたい。

・文献収集においては、日本で入手できなかったオロモに関する博士論文2本と19世紀中葉に書かれたドイツの人文地理学者たちのオロモに関する貴重な記述を収集することできた。これらの資料は、今後のオロモに関する文献研究をさらに展開していくための重要な素材となるだろう。

●本事業について

 事業があることによって、今回貴重な儀礼を撮影することや所蔵について確認がとれていながら、これまでずっと入手できることができなかった貴重な資料を入手する機会を得ることができ、非常に感謝しています。今後もこうした事業が存続していくことで、恵まれない研究者たちが救済され、貴重な研究がおこなわれていく機会が確保されていくことを祈ります。