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文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業 研究成果レポート

ファハナ・ヤスミン(比較文化学専攻)

1.事業実施の目的

バングラデシュ北部地域の少数民族コミュニティにおいて政府機関やNGOが実施している初等教育プログラムの教育の質、及び子供たちの生活への影響について、文化人類学的に調査し検証することである。

2.実施場所

バングラデシュ・ダッカ、ラジャヒ管区・ファーシャパラ村

3.実施期日

平成24年5月2日(水)から5月31日(木)

4.成果報告

●事業の概要

 本調査では、平成24年5月2日から5月30日の期間に、バングラデシュ北部地域ファーシャパラ村の少数民族コミュニティにおいて、政府機関やNGOによって提供されている初等教育プログラムが、少数民族の子ども達の教育の質を改善しているのか、教育プログラムが子供たちの生活にどのような影響を及ぼしているのかについて、文化人類学的フィールド調査を実施し、検証した。さらに、大学付属図書館やバングラデシュ統計局、教育省において資料を収集することによって、社会経済的に恵まれないコミュニティに、教育が及ぼす影響に関する一次データおよび二次データを収集し、社会的に疎外されている状況の背後にある理由を特定する調査を実施した。
 具体的には、バングラデシュにおいて政府機関やNGOによって提供されている初等教育プログラムとその社会経済的影響に関する補足調査を下記の通り実施した。
 (1)5月3日から5月7日まで、バングラデシュのダッカにおいて、初等教育開発プロジェクトを周辺地域において実施しているNGOであるASHRAIとBRACリサーチセンターを訪問し、バングラデシュの周縁地域にある少数民族コミュニティで実施している教育政策や教育プロジェクトについて、さらに僻地教育に関するこれまでのNGOによる調査に関して、関係者にインタビュー調査を実施した。また、ダッカ大学図書館および、BRAC大学図書館において教育問題に関する文献資料の調査収集を行った。教育省において、少数派グループの学童の教育をめぐる国の教育政策について情報収集を実施した。バングラデシュ統計局において過去5年間の教育関連の統計資料を収集した。
 (2)5月8日から5月25日まで、バングラデシュ北部ラジャヒ管区ファーシャパラ村において地元のNGO学校の教育現場を参与観察するとともに、通学する学童およびその両親、教師、教育委員会委員、PTA役員にインタビュー調査を行い、初等教育プログラムの現状およびその社会経済的影響に関する情報収集を実施した。また、一般家庭を訪問調査した。特に、学校に行くことへの関心、母語による教育の重要性、将来に関して調査を行った。また、学校の教育内容や教育システムに関するデータを収集した。
 (3)5月26日から5月29日までダッカに滞在し、ダッカ大学人類学部およびBRAC大学図書館においてバングラデシュにおけるNGO教育についての情報収集を実施した。

 なお、5月30日に帰国する予定であったが、飛行機の遅延により、帰国が31日となった。

●本事業の実施によって得られた成果

 今回の調査では博士論文調査を実施する上で必要な予備的なデータ(NGO団体、調査地の概要、初等教育プログラムなど)を収集した。この調査によって、少数民族の子供たちの学校教育についての構想を具体化することができ、少数民族の文化的次元、子供たちの置かれている状況、初等教育を推進するNGOの役割といった3つの主要分野における重要な問題を概念化することができた。

●本事業について

 文化科学研究科リサーチ・トレーニング事業は、非常に有益なプロジェクトで、フィールドワークを通して、博士論文を執筆する上で力強い支援となった。