総研大 文化科学研究

論文要旨

ユーザビリティ専門家のコンピタンス定義に関する
実践的アプローチと理念的アプローチの比較研究

*1:文化科学研究科メディア社会文化専攻
*2:テクニカルコミュニケーター協会

佐藤 大輔*1、黒須 正明*1、高橋 正明*2、高橋 秀明*1

キーワード:

ユーザビリティ、人間中心的設計、コンピタンス

本研究では、ヒューマンインタフェースの分野において近年高まりつつあるユーザビリティ専門家の人材育成への関心を踏まえ、ユーザビリティ専門家に求められるコンピタンスの明確化を目指し、現在のユーザビリティ関連の分野で実際に広く要求されているコンピタンスを実践的に明らかにした上で、先行研究として行われていた理念的アプローチとの差違を検討することを目的とした。

まず、ユーザビリティ関連分野におけるマネージメント層を中心に半構造化インタビューによる2度のデータ収集および分析を実施し、コンピタンスリスト第1版を作成した。次に、質問紙調査によって検証と分析を行い、コンピタンスリスト第2版を作成した。続いて、コンピタンスリスト第2版に対して詳細な考察を行い、コンピタンスリスト第3版を作成した。第3版は、大きく7つに分類された60項目のコンピタンスから構成されており、実際の活動に直接対応したものから、より根源的なものまで重層的にコンピタンスが提示されている。

得られたコンピタンスリスト第3版と先行研究のコンピタンスリストとの比較検討を行い、アプローチの相違や、コンピタンスリスト作成の元々の目的の相違に起因する、コンピタンスリストの特徴や傾向について明らかにした。また、コンピタンスリスト作成における実践的アプローチについての有効性を示した。