総研大 文化科学研究

論文要旨

第22号(2026)

第2期全球的視座プロトコル(SPGP)の
理論設計と評価計画


―没入型VRによるローカル-俯瞰視座往還と構造化対話の実装設計―


総合研究大学院大学 先端学術院 総合地球環境学コース
 重定 菜子


キーワード:

地球環境問題、知識-行動ギャップ、第2期全球的視座、第2期全球的視座プロトコル(SPGP)、没入型VR、構造化対話、オーバービュー・エフェクト、接触仮説、在来知、自分ごと化

地球環境問題への危機意識は広く共有されているにもかかわらず、具体的な行動変容には結びつきにくい。この「知識-行動ギャップ」に対し、本研究は、宇宙からの俯瞰視点とローカルな生活世界を行き来させる「第2期全球的視座」を理論的に定式化し、介入プロトコルとして没入型VRと構造化対話を統合したSecond-Phase Global Perspective Protocol(SPGP)を設計し、その評価計画を提示する。


従来のOverview Effect研究は、宇宙からの地球俯瞰が畏怖(awe)や自己縮小感(Small Self)、人類全体への同一化を高めうることを示してきたが、その効果は抽象的理解や一過性の情動にとどまり、周縁化された地域の生活世界や在来知との接続が弱いという限界を持つ。本研究は、俯瞰視点と地上的視点を往還させ、在来知を等価な知として扱う第2期全球的視座を提唱し、その醸成プロセスをSPGPとして具体化する。


この枠組みを抽象論にとどめず生活世界に根ざして検証するために、隆起サンゴ礁の喜界島(日本)、熱帯雨林のカメルーン東南部、高地砂漠のアタカマ(チリ)という生態・文化条件の異なる三地域をフィールドに選定した。いずれも開発圧力や保護区化などの外圧のもとで周縁化されてきた歴史を共有しつつ、資源・水・生業・儀礼・共同性の循環という通底構造をもつ。喜界島では「島=生命体」という感覚や水源地をめぐる祈祷儀礼、カメルーンでは森の恵みを分かち合う分有規範や人と森が共鳴するポリフォニーが観察された。アタカマでは星空と水資源を軸に調査準備を進めている。


SPGPでは、研究者が一方的に記録するのではなく、地域住民との協働により、各地域の生活世界を3Dキャプチャ、高精細360°映像、立体音響によってVRモジュール化し、住民自身の語りを短編映像として埋め込むことで、そのナラティブを身体的に追体験可能な形で可視化する。SPGPは、こうしたVRによる相互ローカル体験と地球俯瞰を、社会心理学の条件付き接触仮説(対等性・共通課題・ロール交代)に基づく構造化対話で橋渡しするよう設計されている。


効果検証に向けて、SPGP条件とVR単独条件を比較する二群準実験を立案し、心理指標と行動変容を縦断的に測定する計画を示す。本稿は、地球環境問題の「自分ごと化」を促す第2期全球的視座の検証に向けたSPGPのデザインとメソッドに関する論文として、Overview Effect研究と接触仮説の統合、反証可能な介入デザイン、そして周縁化されてきた地域の在来知を介入プロセスに埋め込む枠組みを提示するものである。