総研大 文化科学研究

論文要旨

長崎市万才町遺跡出土のガラス製品の自然科学的分析

―蛍光X線分析と鉛同位体分析による生産地推定の試み―

総合研究大学院大学 文化科学研究科 日本歴史研究専攻 新免 歳靖

長崎市文化観光部文化財課 豊田(柚木)亜希子

長崎県知事公室 世界遺産登録推進室 川口 洋平

国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学 齋藤  努

キーワード:

カリウム鉛シリカガラス、カリウム石灰シリカガラス、比重測定、エネルギー分散型蛍光X線分析、鉛同位体比測定

本研究では、長崎市万才町遺跡県庁新別館地点から出土したガラス製品の7点について、比重測定、蛍光]線分析、鉛同位体測定を行った。蛍光]線分析では、ガラスの化学組成を求め、カリ鉛ガラスとカリ石灰ガラスの2種類が存在することが明らかとなった。この結果は、比重測定の結果と整合性のある結果であった。また、カリ鉛ガラスとなった資料5点のうち3点は、考古的な情報や鉛同位体測定から日本産ガラスの可能性が高いと判断された。一方、残る2点については、中国産ガラスと推定したが、自然科学分析結果から決定的な証拠は認められず、今後の分析データの蓄積が待たれる結果となった。ただし、少なくとも基準となりうるデータであり、今後の分析データの蓄積が望まれる。