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学生派遣事業 研究成果レポート

光平有希(国際日本研究専攻)

1.事業実施の目的

国立国会図書館と北里大学東洋医学総合研究所での文献調査、及び第52回「日本文化と音楽療法」研究会への参加

2.実施場所

国立国会図書館、北里大学東洋医学総合研究所、武蔵野中央病院

3.実施期日

平成26年3月25日(火)から3月29日(土)

4.成果報告

●事業の概要

 本事業は、国立国会図書館と北里大学東洋医学総合研究所で、近世及び近代日本における音楽療法関連文献の調査を行うほか、第52回「日本文化と音楽療法」研究会への参加を目的に実施された。
 まず国立国会図書館では、フランスのヘクトール・ショメHector Chomet(1808-?)やアメリカのエヴァ・ヴェスツエリウスEva Vescelius(?-1917)の著作など、近代日本音楽療法思想に影響を与えたと考えられる近世及び近代西洋音楽療法史料の調査収集を行った。また、近代日本において刊行された『音楽雑誌』『音楽界』などの音楽関連雑誌及び『日本医史学雑誌』『中外医事新報』『東京医事雑誌』『日本医事雑誌』『中外医事雑誌』『医院雑誌』などの医学関連雑誌にみられる音楽療法関連論文のほか、地方紙を含む当時の新聞にみられる音楽療法関連記事についても調査収集を行った。これらの調査収集により、近代における音楽療法思想の変遷を概観するほか、当時の思想基盤や特徴を分析するための史料を多く揃えることができた。
 次いで北里大学東洋医学総合研究所では、主として医学史研究部に所蔵してある文献のうち、これまで国際日本文化研究センター図書館及び、京都大学医学図書館などで調査を行ってきたものの、未収集であった近世初期から中期に刊行された音楽療法関連史料を調査収集した。また、北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部には、近世日本養生論の起源である古代中国養生論の史料や、古代中国養生論に関する先行研究も豊富に所蔵されており、本事業では近世日本養生論の史料調査と並行して古代中国養生論についても調査することにより、近世日本音楽療法の思想基盤解明に必要な史料も収集することができた。さらに、医学史研究部に併設されている「東洋医学資料展示室」を訪れ、漢方医学についての展示も見学した。
 最後に、今回参加した「日本文化と音楽療法」研究会は、国内で唯一、日本文化と音楽療法の関連、性について体系的に検討を続けている研究会であり、1月・8月・12月を除き毎月1回開催されている。本研究会は、精神科医・音楽学者・音楽療法士などで構成されており、毎回、古くから民俗的風習の下で発展してきた日本の音楽療法について、研究発表のほかディスカッション形式で検討がなされている。今回の研究会では、能や狂言のリズム、あるいは義太夫や歌舞伎の語りなどに焦点を当て、そこに見られる日本伝統音楽の特徴を参考に、日本人に合った音楽療法の在り方について検討がなされた。また、近代日本音楽療法の先駆けとも考えられる神津仙三郎『音楽利害』に関する発表も行われ、いずれも各見地からの活発な意見が出されていた。

●本事業の実施によって得られた成果

 今回、国立国会図書館及び北里大学東洋医学総合研究所で文献調査を実施したことにより、博士論文執筆のために必要な近世・近代の音楽療法思想に関する資料収集がかなり進んだ。今後、本事業で得た資料について分析を行い、国内外の各学会での発表及び学術論文への投稿する予定である。
 また、第52回「日本文化と音楽療法」研究会へ参加したことは、博士論文で、西洋音楽療法思想を受容した近代日本における音楽療法思想を検討すると共に、西洋音楽療法を受容する以前から、自国の文化土壌に根付いていた日本の音楽療法についても考察したいと考えている報告者にとって、音楽療法分野に関する様々な見地からの御意見を頂戴できる貴重な機会であった。このように、これら本事業における調査及び研究会参加は、博士論文執筆の大きな一助となった。

●本事業について

 歴史研究をする者にとって、文献調査は非常に重要であるが、他県及び国外など遠方での調査の場合、学生にとっては旅費など費用負担の問題が大きい。それは、研究会及び学会への参加でも同様である。そのような中で、今回、文化科学研究科学生派遣事業の援助を受けて、調査及び研究会への参加が実施できたことは、大変ありがたく、心より感謝している。今回の実施で得た成果を、今後の博士論文執筆の糧として、今後もしっかり研究に邁進したい。



※本事業における成果は、事業内容について社会に広く情報提供することとしています。この研究成果レポートについても、ホームページに公開します。(http://www.initiative.soken.ac.jp/)本研究成果レポート及びホームページに掲載可能な研究活動風景を紙媒体及び電子媒体(e-mailもしくはCD)にて専攻担当係までご提出ください。