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学生派遣事業 研究成果レポート

劉征宇(地域文化学専攻)

1.事業実施の目的

後期のリサーチプロポーザルを作成するための予備調査

2.実施場所

中国・天津市

3.実施期日

平成25年8月16日(金)から9月2日(月)

4.成果報告

●事業の概要

 今回の天津で行った現地調査は博士論文のリサーチプロポーザルを作成するための予備調査である。天津では、社会主義政権下での再建及び改革開放期での発展は市民生活に影響を与え、従来の食事作法と礼儀にも際立つ変容が現れてきた。そのため今回の調査は食文化に関する記録、写真や収集品などの資料を採集することに重点をおいた。具体的には、1)天津市の資料館(保存書類)、図書館及び博物館において保存されている食生活に関する記録、文書及び写真などの資料をコピーする。2)食事生活や食事作法などの項目(日常食事の場所、座順、タブー及び話題など)を世代別に被調査者に聞き取り調査をする。3)天津において時代的な特徴がある料理店を訪問し、記録、写真や収集品を採集した。
 天津での調査は、市民の食生活に関する保存種類を採集したうえで聞き取り資料とあわせて比較分析することで、社会主義国家前期(1949-1970)における市民の食生活の特徴を伺えた。調査地域としての天津市は解放戦争の主戦場となり、社会主義のイデオロギーに従って再建された。一連の政治運動とともに社会構造、地域文化や都市生活は中心政権から強い影響を受け、市民の食事生活も変化してきた。
 1950年代における社会主義改造を伴い、外食システムに「公私合営」という政策が実施された。 伝統的な料理店を四つのクラスに分け価額を制定した。さらに、「集団化」の建設とともに、公共食堂は社会内に広く普及した。都市部では主に役所と工場、学校と団地などの食堂で共食し、農村地域では人民公社から食べ物を多めに家に持ち帰って食べる人びとがよく見られた。1960年代初期、ひどい飢饉を切り抜けたため、家庭、公共食堂や飲食店で「増量炊飯法」という食糧の節約食法を普及させた。当局側からのよい評価と比べて、インフォーマントたち(60、70世代の女性・5人)はその方法によって作った米飯を非難した:「米飯が柔らかすぎてとてもまずかったが、仕方がなかったでしょう。定量供給制によって、食糧が少なかったから」。その後、「冷凍卵」という食製品は製造され、社会中に売られた。インフォーマント(50世代の女性・1人、男性・1人;40世代の女性・2人)からの説明により、「この製品は凍らせた卵液を小さいかたまりに切って売られたものでした。定量販売の卵と比べて、冷凍卵は値段が安く買いやすかった」。社会主義政権下での建設ラッシュと思想改造に伴って、人びとの暮らしていた社会環境と思想文化は急激に転換し、市民の食生活も社会主義のイデオロギーに制約されてきた。
 この予備調査を通じて、この20年間(1949-1970)における、市民の食生活に関する発展と変容を明にすることができた。

●本事業の実施によって得られた成果

 この予備調査によって、さらに詳しい調査計画またインタビューに関するチェックリストを考案し、博士論文の作成にむけてのリサーチプロポーザルを改善できる。

●本事業について

 文化科学研究科学生派遣事業に受けて、予備調査を順調に進むことができた。とても有益な事業である。