国内外フィールドワーク等派遣事業 研究成果レポート





梅 定娥(国際日本研究専攻)
 
1.事業実施の目的 【h.海外フィールドワーク派遣事業】
  博士論文を執筆ための資料調査
2.実施場所
  中国国家図書館・北京大学図書館・中国現代文学館・天津南開大学図書館
3.実施期日
  平成18年5月27日(土) から 平成18年6月9日(金)
4.事業の概要
 

  博士論文を執筆のために初めての海外資料調査となります。「満洲国」文学に関する資料は散逸したものが多いし、どの図書館に何があるのかを知ることも難しいです。中国東北地方の各図書館には所蔵が結構あるらしいですが、そこの図書館の利用にいろいろな制限があるそうで、まず北京に行くことにしました。
日本で前もって中国国家図書館のHPを調べ、「満洲国」時代の文学作品のリストを作成しました。ところが、それを北京に持って行きますと、HPに載ったデータの実物が実は少なかったのです。理由として、そのデータは昔他のいくつかの図書館と一緒に作成されたもので、データにあるものが実際国家図書館にあるとは限らないと館員から説明してもらいました。そうしたら、せっかく見つかったと思われた資料はまた所在不明になってしまいました。ここで資料調査の難しさを改まって感じました。
それに、「満洲国」関係資料は1950年前のものですので、コピーしてはいけません。一方、見つかった資料は、必要なら図書館側はきちんとデジタルカメラで写真を撮ってCDに入れてくれます。これは助かります。
 国家図書館では、「満洲国」文学関係の雑誌や本はそれほど多くないですが、「満洲国」の新聞などは数多く収蔵しているそうです。残念ながら私はそこまで手を回すことが出来ませんので次回に譲るしかありません。
 北京大学図書館には関係資料は多くはありませんでした。また、同じようにコピーはしてくれません。デジタルカメラで写真を取ってくれますが、その量は本の總ページ数の三分の一を超えてはいけないという規定があります。
 現代文学館は普通の図書館とは違い、館員が資料調査の利用者に慣れていないようです。館員の態度は親切ですが、北京大学図書館と同じ、撮影してくれる内容が本の総ページ数の三分の一を超えてはいけないというおきてがあります。それに協約を結ばなければなりません。もう一つここには本を文物として扱われていますので、本の級別によってやり取り方や費用が違います。
  最後に天津南開大学図書館を訪れました。この図書館には、特に取っておきたい資料がありませんので詳細な内容は省きます。

5.本事業の実施によって得られた成果
   「満洲国」関係資料が人の目に触れずに眠っているものが多いです。私はこれらの資料を発掘しながら博士論文を書こうと思っています。今度の調査成果として古丁訳夏目漱石の『心』をはじめとする「満洲国」時代日本にかかわりのある資料を多く見つけました。これらの資料を検討しながら論文を一本書きたいと思っています。 

6.本事業について
   今回の資料調査によって研究者は強力な経済サポートがなければなかなかいい研究が出来ないということをつくづく思いました。そういう意味で、私たちに調査経費を提供してくださるイニシアティブ事業が非常にありがたい存在です。我々院生はこれをうまく利用して研究者として成長していけばいいなと思っています。

 
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