国内外フィールドワーク等派遣事業 研究成果レポート



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渡部鮎美(日本歴史研究専攻) | |
1.事業実施の目的 【c.国内フィールドワーク派遣事業】 | |
田植の労働時間の計測・オーラルな資料の収集・文献資料の収集 | |
2.実施場所 | |
山梨県富士河口湖町河口地区 | |
3.実施期日 | |
平成18年5月19日(金) から 平成18年5月23日(火) | |
4.事業の概要 | |
平成18年5月19日、午前に基盤機関(佐倉)より電車で新宿へ向かった。新宿駅から高速バスを利用し、富士河口湖町へ向かい、同日午後より、河口地区での調査を行った。 |
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5.本事業の実施によって得られた成果 | |
報告者はこれまで、空中田植と機械植という2つの技術で稲作労働について、計測した労働時間や生産費から実証的にその経済性や合理性について論じてきた。その一方で調査地の河口地区には現在も手作業で行われている田植があり、この技術については聞き取り調査や写真資料、一部作業の計測データから記述を行ってきた。しかし、この手作業での田植労働については、これまで実測資料がなく、実証的な論を展開できていなかった。 今回のフィールドワークでは、こういった問題意識から、手作業での田植をビデオで記録し、この映像をもとに労働時間の計測をすることを試みた。結果、労働時間や生産費を算出することができ、このデータを利用することで、手作業での田植労働を実証的に論ずることが可能になった。また、修士論文で扱った稲作労働の経済性・合理性に関する論を補強する事例として、今回の計量・計測データを用いることもできると思われる。さらに、今回は畦畔の造成についても労働時間の計測を行うことができたので、このデータも今後、活用していきたい。 また、聞き取り調査からは、河口地区での内水面の利用と土地の所有に関する階層性が関係していたこと、山林や内水面等の土地資源の認識が通常の田地とは異なっていたことなどを知ることができた。こうした山林・内水面・田地の土地資源の配分方法と利用については、これまでの先行研究で論じられてきた形態とは異なる面があり、この点についてさらに調査をする必要があると考えている。特に河口地区では居住年数が土地の配分に際して大きな要因になっている他、「早いもの勝ち」的な規範が浸透していることが大きな特徴でこうした土地利用に関する規範意識が本当に共有されているのか、今後の調査によって明らかにしていきたい。そして、今回の調査で新たに聞き取りをすることができた話者からは、これまで聞き取りを行ってきた話者から得られなかったオーラルな資料を収集することができたので、今後の調査でこうした話者の聞き取りを重ねていきたい。 さらに、今回、明治期~現在までの浅間神社所有の文書や河口湖土地改良区所有文書の一部を閲覧することができ、これらから、山林や田地の所有に関する規範の歴史的変遷を追うことが可能であるという知見を得た。これらの文書の中には宮司が不在で許可が得られず、閲覧できなかったものもあるので、今後の調査で随時、交渉し、利用をしていくつもりである。 上記の調査内容については、今年度、修士論文を再編集して学術雑誌に投稿する際に用いる他、今後の調査内容と合わせて、新たに執筆予定の論文の事例、データとして用いる予定である。 |
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6.本事業について | |
民俗学の研究活動にはフィールドワークが欠かせない。本事業が今後もそれを理解し、支援するプログラムとして機能し、有効に活用されることを望む。 |
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