総合研究大学院大学文化科学研究科「魅力ある大学院教育」イニシアティブ 総合日本文化研究実践教育プログラム
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李 昌 熙(日本歴史研究専攻)
1.事業実施の目的 【h.海外フィールドワーク派遣事業】
   土器付着炭化物採取及び土器観察
2.実施場所
  韓国の韓神大学校・蔚山文化財研究院・晋州市平居洞遺跡
3.実施期日
  平成19年11月27日(火)〜12月1日(土)
4.事業の概要
 

 今回の事業の目的は韓国出土の後期無文土器時代〜原三国時代及び楽浪土器の実物を観察してその土器に着いている炭化物を採取することである。土器に直接着いている炭化物は木炭などに比べると伴う土器の型式が分かるためにとても良い試料である。そして、型式学的に明確に位置づけられた土器に炭化物が残っていたらその試料を採取して、土器型式を用いたウィグルマッチ法を適用するにはとても良い試料である。私の今回の目的は炭化物を採取する基本的な方法と全般的な過程を習得することである。 炭化物採取の全般的な過程はお供した主任指導教員である藤尾先生から学ぶことができた。
 炭化物を採取する方法と道具は意外に簡単なものだった。むしろどんな試料が炭素14年代測定をするのに良い資料なのかを選別するのが難しかった。そして、韓国ではまだ炭素14年代測定に関する研究が活発に行われていなくて、土器に着いている炭化物に対する認識が不十分なので出土した土器をきれいに洗浄してしまった整理ずみの土器資料では炭化物を見つけにくい。
  まず韓神大学校博物館が所蔵している風納土城出土土器と百済時代の住居址で出土した土器に付着した試料を採取した。大部分が洗浄によって炭化物がほとんど残っていなかった。しかし土器を成形する時に行ったタタキの格子打捺文の凹部に着いていた炭化物が残っていたので、それを対象にした。 その中でも一番よく炭化物が残っている試料を選別して、風納土城出土土器3点、龍仁水枝百済住居址で出土した土器2点の炭化物を採取した。 次に慶南発展研究院歴史文化センターで現在発掘調査中の晋州市平居洞遺跡の試料を採取した。住居址床面に残っている木炭を含めて同じ住居址で出土した突帯文土器の内面に着いていた炭化物を採取した。特に未洗浄の突帯文土器の内面には多量の炭化物が良好に残っていた。

5.本事業の実施によって得られた成果
 

 今回の事業の最大の意義は私自身が初めて直接土器に着いている炭化物を採取したことである。現在炭素14年代測定法に関する基礎を勉強しているが、実習できたことは大きな意義がある。基本的な道具から採取する方法及び整理に至る過程を学ぶことができた。予想していたよりは簡単な作業だったが、問題はどんな試料を採取するかである。どんな状態でどのぐらいの量があれば炭素14年代測定ができるのかに対する標準的な状況が分かった。
 韓国では年代測定が行われている試料の大部分が木炭である。しかし木炭はさまざまな理由で試料的な限界がある。木材は伐採年代とか製作年代、再使用などさまざまの外部原因があるから測定年代が出てきても活用しにくい部分がたくさんある。しかし土器に着いている炭化物はその土器型式が確かであれば、暦年代を求めるにはとても良い資料である。したがって今回土器に着いている炭化物がとても良い年代測定の試料であることが理解できた。 やっぱりこのような良い試料を活用するためには調査者がその重要性を認識して、発掘調査当時あるいは洗浄する前に資料を採取しておく必要がある。このような点は私だけではなくてすべての考古学者が認識をしておくことが必要だろう。以上の認識転換も今回の事業の大きい成果と考えられる。
  これからAMS炭素14年代測定法に関するより具体的研究を行って、研究テーマの時期にあたる資料を収集して、較正年代を通じて考古学的事象に活用して、BC 1世紀〜AD 2・3世紀頃の日韓土器の併行関係を樹立しようと考えている。

6.本事業について
   
 
 
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