
社会的に排除されたマイノリティが、マジョリティ社会に包摂され、なお自律的に生活していくための条件はなんだろうか。包摂には、少なくとも可視化(マイノリティの抱えている問題がマジョリティから認識されること)と平等化(マイノリティがマジョリティと平等の社会的諸権利を保障されること)が必要である。そして自律にはマイノリティ自身のエンパワーメント(問題解決に自主的に取り組めること)と、マジョリティ自身の変容(排除を再生産しないこと)が必要となるだろう。
社会的排除とは、マイノリティが不平等な待遇を受け、それをマジョリティが問題として認識していない状態である。それはマイノリティが必要な支援を受けられず、放置された状態といえるだろう。それでは、マイノリティの包摂と自律、およびマジョリティの変容のためには、どのような支援が必要だろうか。本研究では支援を以下の基準で分類し、どのような支援の組み合わせが、どの段階で有効かを考える。
総括研究①「グローバルな互恵性の構想」では、上記の支援研究をグローバルな課題である社会的排除・包摂・連帯経済・ウェルビーイング・移民などの問題群に関連づけ、現代社会における支援の多様な意味を考察する。総括研究②「支援のための実践人類学(人類学的支援)」では、支援を諸段階からなるサイクルとして認識し、各段階で人類学的研究がいかに貢献できるかを考察する。以上の総括研究は、4領域にわたる各論研究の具体的な問題検討を踏まえつつ実施する。