ポスター発表

ポスター発表

考古学の普及とインターネットの活用
-「アルケオス」電子雑誌のプロジェクト-


発表者所属名
比較文化学専攻・国立民族学博物館
発表者氏名
SAUCEDO SEGAMI Daniel Dante (http://www15.ocn.ne.jp/~segami/index.html

 「アルケオス」考古学電子雑誌のプロジェクト(http://mileto.pucp.edu.pe/arkeos/)は電子メディアを使用し、考古学者と一般の人々のつながりを作る。電子雑誌を立ち上げた理由は単純な発想からである。紙製の雑誌や書籍は非常に高額であるため、ペルーのような発展途上国では購入して読める人は少ない。ところが、近年ではペルーでもインターネット・カフェが普及したため、誰でも容易にインターネットへのアクセスが可能となった。この状態を有効に利用するため、カトリカ大学考古学専攻の在学生と卒業生が共同で、2006年に「アルケオス」電子雑誌プロジェクトを立ち上げた。この電子雑誌はインターネットを利用することで、世界中から無料で読むことができる(「オープン・アクセス」という運動)。
 「アルケオス」の評判は良好で、毎月約4000人のアクセス件数がある。また、本サイトはカトリカ大学の技術者が管理しているため、経済的に低コストで維持できている。つまり、本プロジェクトは考古学者が情報収集を行い、技術者と連携してインターネット上で情報を公開するという新しい方法を発達させた学際的なプロジェクトといえるのである。
 「アルケオス」は研究者同士のみならず一般の人々との交流を深めるために、電子メディアの利点と可能性に焦点を当てている。電子メディアを活用することで、インターネット上で新たな考古学的発見、最新の学会情報、文化遺産保存の情報などが即座に公開できるのである。言うまでも無くアクセスするためにはインターネットに接続したパソコンが必要ではあるが、基本的には誰でもどこでも最新情報を獲得できるのである。もう一つの利点は、他分野の研究者や一般の人々との交流ネットワークが構築できる点である。また、電子マガジンに論文を発表した研究者との直接的な交流を通して、一般の人々も議論に参加することが可能となっている。
 このプロジェットは電子メディアのメリットを示唆すると考えられる。三年間で「アルケオス」は10号を刊行し、2009年9月までにはサイトへ約16万人の訪問者があった。スペイン語の雑誌であるが、他言語の国にも購読者を持つ。また、一般の人々とのつながりは増えており、毎月考古学について一般の人々から約10の質問が届いている。研究者と一般の人々の交流ネットワークができたと言える。「アルケオス」の最大の成果として、第三世界諸国における大学の電子雑誌としてのモデルとなったことが挙げられる。