編集後記

一年の間に行われたイニシアティブ事業の成果報告の場として、また日常的には東京、千葉、大阪、京都に分散する教員・院生の交流の場として、今回のフォーラムは企画された。

「産学連携」「共同研究」という用語は研究活動を行う上では欠くことのできない要素となっている。これは、隣接諸科学の共同の中でこそ、新たな学問的意義や価値が生まれてくるという認識が既に常識になったことを意味している。

異なる事物をつなげ、新たな意味を創出し、それを社会に問いかけ還元していくにはどのような方法をとればいいのか。今回の企画は、この研究上最も重要な問いかけに取り組んだものであった。昨年の「学生合同セミナー」から「総研大文科フォーラム」へと名称を変更したのも、このフォーラムが「文化科学」の名のもとに、より大きな構想に基づいた研究を志向する場になってほしいという願いからである。

今回のフォーラムでは、参加者の生の声をぶつけ合い、対話することに主眼を置いた。講演やワークショップなどを行わずに、成果報告のみでプログラムを作成したのはこのような理由からである。二日目午前に行われた口頭発表では、発表者とは異なる専攻に所属する教員が代表質問を担当した。日常の学会・研究会では決して出ないであろう切り口で質疑が成され、発表者・フロアー双方に大きな刺激を与えることができた。

さらに二日目午後のポスター発表は、個人的にも極めて新鮮であった。国文学や歴史学の分野ではまだまだ馴染みのない発表形態であるが、発表者と聴衆との距離が近いため、文字通り分野を越えて活発な議論が生まれ(例えば、心理学専攻の教員と日本中世史専攻の院生が共に、インドをフィールドとする人類学専攻の発表者のポスターの前で、ジェンダーについて議論していた。)、有益な情報交換が行われたように思う。

このポスター形式発表は、発表ブースの機材の充実や、休憩スペースの確保など、施設面を補強することにより、さらに有意義な対話の場として機能させることができると考える。

勿論、反省点は多々ある。予定プログラムの周知が十分できなかったことや、発表者・参加者への事前の細かな伝達事項が不足していた点など、数え上げればきりがない。成果と反省点を明確に区別し、今後につなげていきたい。

この文科フォーラムは、過去二回のみの実施であり、まだまだ船出をしたばかりといえる。だがそれは、どのような試みであっても、目的に応じて柔軟にプログラムに組み込んでいける、という意味でもある。

実際、外部の研究者・学生への公開は可能か、といった声も出始めている。既にこのフォーラムはさらなる展開に向けて動き出しているといえよう。

「総合」という名が冠されて行われる研究は多々ある。しかしながら、それを真の意味で実現させ、具体的な成果に結びつけていくのは非常に困難なことである。多角的な研究を結びつけ、一点に収斂する場としての「核」が必要である。この文科フォーラムが総研大文科科学研究科の「核」に発展することを強く望んで本特集号の結びとしたい。

 

付記

我々学生支援相談員を全力で支えてくれたイニシアティブ担当の先生方、各基盤機関と葉山本部の職員の皆様、そして何より、実行委員長という名称を冠しながらも、至らない点ばかりを露呈してしまった私を見捨てず、最後まで一緒に今回のフォーラムを作り上げてくれた各専攻の支援相談員の仲間達に、末筆ながら記して謝意を表したい。