平成26年度 学生派遣事業

金 跳咏(日本歴史硏究專攻)

1.事業実施の目的

韓国考古学全国大会の参加、国立慶州博物館での調査

2.実施場所

韓国ソウル市、 韓国慶州市

3.実施期日

平成26年11月6日(木)から11月11日(火)

4.成果報告

事業の概要

 第38回 韓国考古学全国大会で発表された「放射性炭素年代に関する融合的な理解」を聴講。 これによって、日韓において議論になっている放射性炭素年代、そしてこれと関わっている様々なテーマに関する全般的な理解ができた。

 測定年代が数値に換算されるため、科学的といえる放射性炭素年代測定の結果を巡っても、様々な見方が存在していることを知ることができた。つまり、放射性炭素を用いた年代測定はいつも絶対的年代ではなく、考古学的な状況と結びつけて理解することで、はじめて意味のある年代を導出することができるということが、今回の韓国考古学全国大会でも再び明らかになった。

 その例として、自由パネル2分科で発表された「放射性炭素年代青銅器時代前期土器編年の再検討」は好例であろう。この研究によって今まで具体的に理解できなかった青銅器時代の全体的な編年体系を、ある程度把握することができた。

本事業の実施によって得られた成果

 博士課程は、金工品を通じて、古墳時代・三国時代存在していた日本列島の倭と朝鮮半島の諸国の政治的関係を明らかにすることを目的としている。ただし、金工品の製作において必須と思われる道具、例えば鏨などがすべて鉄で作られていることを考慮すると、朝鮮半島と日本列島において鉄の登場時期、そして各地域で鉄を直接に生産した時期を明確にする必要がある。これについては、すでに多くの先行研究が蓄積されている。

 しかし、まだ両国で鉄を生産する以前から登場している中国系鉄器の意味に関しては具体的な研究は不足している状況である。博士課程の最初のテーマは、以上のように日本列島と朝鮮半島に登場する中国系の鉄器の意味を「限冶供鉄政策と東アジアの鉄器文化の到来」という題目をつけて考察したい。

 このテーマで問題になるのは、先に述べた鉄器の登場する時期である。鉄器の登場時期については、すでに考古資料の検討によって、様々な見解が提出されている。特に、最近には放射性炭素年代測定に基づいて、朝鮮半島で紀元前4世紀に鉄器が登場したという説が注目される。他の見解に比べて約200年以上鉄器の登場時期を遡ってみる見解で、学界でも注目を集めている。

 今回の放射性炭素年代測定の発表を通じて、以上のように、鉄器の登場時期など青銅器、鉄器時代年代論について全般的な理解が可能になったことは重要な成果と考えられる。