
文化科学研究において、「地域」はひとつの基礎となる概念であり、対象である。どの分野においても必然的に関わるこのキーワードを通じて、本研究科の各分野がどのような切り口で研究を行っているのかを互いに理解し、新たな研究を生み出すきっかけとしたい。
「地域」を対象とする場合、二つの方向性が考えられる。ひとつは地域を構成する要素、つまり地域を地域たらしめているものは何か、という内在的な問題であり、もうひとつは、地域と地域、中央と地域、世界と地域といった、外部との関係性における存在としての地域である。
またそこには、地域をどのように認識し叙述するかという、研究的営為であると同時に、「地誌」という形で歴史的に行われてきた行為や残されてきた資料としての問題も含まれている。
今回のシンポジウムにおいては、以上の点を念頭におきつつ、得意の課題で自由に報告をしてもらい、質疑や討論を通して、学生と共に所期の目的を果たしたい。
このシンポジウム「文化科学研究における『地域』」は、2008年12月12日~14日に開催された「文科学術フォーラム2008」の一部であり、13日の午後、大阪市の梅田センタービルにおいて行われた。
「文科学術フォーラム」は、文化科学研究科の横断的教育のために行われているイニシアチブ事業の一環であり、昨年度までは、学生主体の「文科フォーラム」と、教員主体の「学術フォーラム」に分かれて開催していたが、今年度は両者を合体して、ひとつのプログラムとして行うこととなったものである。従って、教員を報告者とするこのシンポジウムは、歴史的には、過去2回行われている「学術フォーラム」の流れを受けたものということになる。
今回は、文化科学研究科各専攻の研究を相互に理解し、新たな研究につなげるためのプラットフォームとして、「地域」というテーマを選び、各基盤機関から1名ずつの報告者を立てていただいた。
各報告者からは大変意欲的な発表をしていただき、また学生コメンテーターや参加者との討論も充実したものとなって、予想以上の成果を収めることができた。ご協力いただいた皆様には、この場を借りて御礼申し上げたい。
内容については、当日のテープ起こしを元に別途報告書*をまとめている。これは文化科学研究科のひとつの業績であり、また今後の研究科における活動のひとつの基礎なるものと思う。当日参加できなかった方はぜひ、また参加された方も改めてお目通しいただき、ご参考にしていただきたければ幸いである。
実行委員を代表して
小島 道裕(日本歴史研究専攻)
*シンポジウム報告書(PDF版)
(2009年度刊行予定)