交流会第1部 趣旨

          (学生合同セミナー実行委員会)

このイベントの掲げる目的は「知的資源の共有化」である。これは新しい学際研究への試行といってよい。

「知的資源」とはなにか。ここでは、このイベントに参加する一人一人の知的活動全てのことを指す。その「共有化」を図ろうとするための手段として、今回はある一つの対象に、各専攻ごとに各専攻なりの学術的アプローチを取ろうと考えた。その成果を各々発表しあうこのイベントこそ「知的資源の共有化」の現場である。

文化科学研究科六専攻の学生は、実は互いに近くて遠い存在として、現在に至るまで親密な交流など皆無に近い状況だった。その原因としては物理的な条件、すなわち大阪・京都・千葉・東京と、皆が遠く離れたところで日々をすごしているということもあるが、お互いが何をやっているのかほとんど知らないという、井の中の蛙的無知が大きな要因ともなっている。有体に言ってしまえば他専攻に興味がなかったということである。

こうした状況を打破するためにも、このイベントの中心に何をもってくるか。熟慮に熟慮を重ねた結果、「洛中洛外図歴博甲本」を対象にしようという結論に至ったのである。

「洛中洛外図」に描かれた中世の日本の巷の様相には、われわれの知的好奇心をくすぐる様々な要素がある。どんなに専門におぼれきっている学生にも、何らかの知的刺激を与えてくれる多様な魅力にあふれている作品である。

これに六専攻がそれぞれの視点を生かして取り組み、それを発表することにより、自ずと熱気あふれる学際的な討論の場が生み出されるのではないかということを期待して、このイベントは開催された。この試みは一応の成功を収めたといってよい。しかし課題も多々見つかった。ここに報告する当日の状況を踏まえて、学際研究の新しい形を模索していければと思う。


《歴博甲本について》
京都の賑わいと四季の景観を描いた洛中洛外図屏風のうち、現存最古のもの。
国立歴史民俗博物館が所蔵する二点の中世の洛中洛外図屏風のひとつで、
旧蔵者名をとって「三条家本」「町田家本」とも通称される。
描かれた景観の年代は、大永5年(1525)から天文5年(1536)ころと考えられる。
片隻138.2 × 342.8 cm。
(国立歴史民俗博物館ホームページより)

《発表内容》
○比較文化学・地域文化学専攻

○国際日本研究専攻

○日本歴史研究専攻

○メディア社会文化専攻

○日本文学研究専攻

《写真集》
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