総合研究大学院大学 文化科学研究科 学術交流フォーラム2009

学生による口頭発表

学生による口頭発表

市販DVD映画を用いたWeb-CALLシステム

発表者所属名
文化科学研究科メディア社会文化専攻
発表者氏名
大倉孝昭 (http://universal.nime.ac.jp/streaming/WebCALL/Webdvd.htm

 1.研究背景と位置付け

 言語コミュニケーションには,その場の雰囲気,ジェスチャー,表情,話者間の距離などのmeta-linguisticな特徴が重要であることは周知である.表面的な言語の裏にある人間の集合体を観察し,その表面にある言語をより深く理解しようとする“Textography”(Swales 1998)はその理論的裏付けである.映画を学習教材として取り入れようという研究は多く、 “CC(Closed Caption)付きビデオを利用したマルチメディア型デ-タベ-スの構築” (Sato, H. 1996)、海外でも「キャプション付き教材を利用した学生は,理解,リスニング力,語彙獲得力,そしてすべての読解に関る動機付けにおいて,顕著な学習効果を発揮する」と報告されている(Goldman and Goldman 1988).
 しかしこれまでは,学校のCALL教室以外で映画を繰り返し見ながら聞き取り・空所補充をするといったCALLの課題を課すことは不可能であった.
 そこで,大倉は映画DVDを学習者が1枚ずつ所持し,個別に学習するシステム(CaptionMaster)をMS excelを基盤に開発した.これにより映画を使っての個別学習が可能となり,著作権に対する懸念を払拭した.その後,複数の共同研究を通じ,映画DVDを用いた英語教育の開発・実践の研究を続けてきた.ただ,CaptionMasterはexcel上に構築されたので,学習を後回しにして映画を楽しむ,日本語字幕を表示したままで学習する,吹き替え音声で学習の負荷を下げようとするなど,教授目的に沿わない学習行動が散見された.さらに,映画タイトルごとにexcelのファイルを作成する必要があった。

 2.問題解決の方法

 CALLシステムをCALL教室外でも利用可能とするため,ネットワーク接続されたPCであれば何処からでも利用できるよう,Webサーバー上に構築することを目指した.
解決1:Shockwave Player上で動作するDVD player を新たに開発・実装した.
解決2:再生経過時間に索引づけられた課題のため,MS Office Web Componentsを採用した.
解決3:各PCがデータベース・サーバーを経由して環境設定値を短いサイクルで取得する方式により,環境設定値を学習者が共有する方式をとった.
解決4:入力用以外に非表示のスプレッドシートを2枚組み込み,そこに課題データと操作履歴を残すことにした.
解決5:学習者用ページでは,教室モードと自習モードを設定値によって識別するようにし,教室モードでは字幕のon・off,音声言語の切り替え,特定チャプターだけの限定再生などを許可制(教師ページ上の設定値)とした.

図1 Webページ左側の説明                  図2 Webページ右側の説明