総合研究大学院大学 文化科学研究科 学術交流フォーラム2009

シンポジウム

シンポジウム

寺島 恒世(文化科学研究科比較文化学専攻・教授)

専門分野
中世和歌、中世日記・随筆文学
現在の研究テーマ
中世前期和歌の表現史・歌論史に関する研究

 概要

 時代の転換期はしばしば人間に極限状況をもたらす。日本文学史においても、平安時代末期から武士の活躍が本格化する中世初頭にかけて、さまざまな人が極限的な状況を体験させられた。本報告では、その過渡期を生きた人物の中から鴨長明と後鳥羽院を取り上げ、彼らの文芸活動を読み解くことを通して「極限の文化」を考えたい。
 鴨長明については、多彩な活動のうち最もよく知られた『方丈記』(1212年成立)を、後鳥羽院については、承久の乱(1221年勃発)に敗れ、遠島隠岐に流されて詠む和歌を、それぞれ取り上げ、文字による表現の営みが果たす意味を検討する。片や都の郊外の山中「日野」に、片や絶海の孤島「隠岐」に生きた彼らは、如何にしてそこに生きられたのか。悟りを求めて仏道に向かう意思との関わりを踏まえながら、〈創作〉する行為を問い直してみたい。