イニシアティブ事業概要

ワークショップ

A班

林 麗英「台湾における村落の共同資源の利用と再生産をめぐる民族間関係の再構築」
[ 検討内容 ]
[ 日本文学研究専攻 ]屋代 純子

 A班では、地域文化学専攻の林麗英さんのポスター発表「台湾における村落の共同資源の利用と再生産をめぐる民族間関係の再構築」の内容を、展示としてどのように構成していくかを討論しました。想定上の来場者は「地域の家族連れ(子供は中学生以上)」です。

 最初に林さんから、パイワン族の伝統的栽培食物「チナヴ」(粒のモチ性アワで作られた、モチ類食品)を商品化し、その包装に用いる「ゲットウ」(ショウガ科ハナミミョウガ属)を採集する活動が、村民、ローカルNGO・NPO法人、政府機関の施設の連携により進められている事例と、こうした取り組みが他民族や漢人との協働作業として行われることで、これまでの民族間関係とは異なる新たなパートナーシップが再構築されている現状について、ご説明がありました。

 ワークグループのメンバーからは、現在の取り組みや課題に対する理解を深める上で、まず展示の導入部において台湾先住民族の歴史や文化について知ることが、重要なのではないかという意見が多く示されました。また討論を重ねていく中で、「先住民族の現状・問題点をどのように伝えるかを考えたい」「この伝統文化は、誰の文化なのかを明確にすることが大切である」という方向性が見えてきました。

 そこで、メインテーマを「台湾先住民族の文化復興」、展示における3つのサブテーマを「台湾先住民族の文化と歴史」「先住民族の現状・問題点」「現在の活動-ゲットウを利用した文化復興」とし、地図や統計資料、伝統的儀礼の写真、「ゲットウ」の現物などの数多くの資料を、サブテーマに沿って展示構成するというアイディアをグループでまとめました。

 今回のワークショップの課題と工夫としては「テーマ設定が異文化理解につながるようにすること」が挙げられます。来場者に「地域の家族連れ(子供は中学生以上)」を想定していますので、子供にとって、アイデンティティの問題を今現在の問題として身近に感じられるような展示とは何かを考える機会にもなりました。

 

[ コアコメント ]
[ 地域文化学専攻 ]林 麗英

 A班では、林(筆者)がポスター発表した「台湾における村落の共同資源の利用と再生産をめぐる民族間関係の再構築」の内容を家族連れと中学生以上に伝える展示の構成や情報の整理などをめぐって討論し、それぞれのメンバーがそれぞれの情報やアイデアを提示しました。その結果、本研究は一般市民向けの異文化理解に関する展示案が完成しました。

 今回、本校の文化科学研究科が毎年開催している文化学術交流フォーラムのワークショップを通じて、他分野の教員と院生に自分の研究の特徴を理解やコメントを得るためのセッション運営方法を学びました。ただ、民族における歴史的文化的の問題点やアイデンティティをどう展示で伝えるかについては課題として共通認識されているところです。