総合研究大学院大学 文化科学研究科 学術交流フォーラム 2015

総括

総括

学術交流フォーラム2015 文学際 ―「文化科学」を発見する― を終えて

 昨年に引き続いて、今年度も学術交流フォーラムを実施することができました。開催にあたって御尽力いただいた、森下委員長をはじめとする学生企画委員のみなさま、山下専攻長をはじめとする日本文学専攻のみなさま、国文研・葉山本部ほか関係者のみなさまに、心よりお礼申し上げます。

 

 今回のプログラムは、口頭発表、ポスター発表、ギャラリートーク、講演会、という、比較的シンプルな学会形式でしたが、私自身も異分野の研究発表や解説から得るところが多く、年に一度の研究交流の機会として、十分に機能していたと思います。基本的にこの形式を踏襲していけば、かなりのノウハウを翌年に引き継ぐことができ、無理なく回を重ねていくことができるのではないかと思いました。

 

 世間では、文系の学部学科は役に立たないから廃止を図るべきだ、などという乱暴な話が出て問題になった年でしたが、文化科学の研究に従事する我々としては、到底肯んじることはできませんし、総研大の中でも、文系も含めてこその「総合」であることが疑われたことはありません。

 

 しかし一方で、我々が専門外の人たちにも分かるように研究を伝える努力をしてきたかというと、そこはかなり不十分な点があるのではないかと思いますし、今回の研究発表でも、必ずしも意識されていなかったように思います。理系も含むさまざまな人たちに、文化系の学問を知っていただかなくては、やはり存在意義が問われます。このフォーラムのような、分野の違う人間が集まる場で切磋琢磨してこそ、その能力を高めることもできますから、研究発表のあり方自体についても、今後はもっと意識的にとりあげてよいかと思います。

 

 総研大全体の中でも、文化科学研究科が担う全学事業という性格がはっきりしてきました。「学術交流フォーラム」という名称は、研究科内での歴史的な経緯からこうなっているのですが、これもそろそろ変えてもよいのかもしれません。

 

 総研大と文化科学研究科の「学風」とはどんなものでしょうか。もちろんそれは自然に形成されていくものですが、専門性に基づきながら、学際的・国際的で、自由闊達なものでありたいと、おそらく誰もが思っているだろうと思います。そんな学問の表現の場として、このフォーラムがますます役割を果たしていくことを期待します。

 

2015年12月
研究科長
小島 道裕

文化科学研究科 学術交流フォーラム2015 挨拶

 2015年度学術交流フォーラムは、会場の関係で、基本的に学会形式になりました。今までのフォーラムには、大学祭的な傾向がありましたし、学生は本当の学会運営に携わった経験が少ないので、学生のみでは学会形式のフォーラムのイメージが確定できないことにしばらくして気づかされました。

 

 また、今回のフォーラムから、学融合推進センター学術交流事業の一環として位置づけられ、全学共同教育研究活動的な側面も考慮することになりました。こうした転換点に位置した今回のフォーラムは、改めてその教育活動的な存在意義をも見つめ直す役目も担うこととなりました。

 

 単なる学会でも、その開催には数ヶ月前からの細心の準備が必要です。手伝って下さる事務の方々と協力してこそ、充実した学会、熱意のこもる討議になるのだということを、学生企画委員に学んで頂けたらと思いました。そして学会準備に携わった学生企画委員の中には、「学会運営の仕方を少し学んだような気がする」と言ってくれた方もいました。

 

 大学院博士後期課程のフォーラムは、やはり学術成果の発表が中心であるべきだと思います。発表準備やプレゼンテーションをすることによって、学生の研究が一段と進むもの、そして学術成果発表によって各専攻がその違いを認識し、理解し合おうとするもの、それが総研大のフォーラムだと思います。しかし学生がフォーラム準備に著しく時間や労力が費やされ、そのために学位申請論文作成にかけるべきエネルギーが消耗されるというような事態が起きてしまったら、それは本末転倒のことになってしまいます。学術的に意味があり、プレゼンテーションの練習にもなり、各専攻が融合でき、あまり学生の負担にならない、そんなフォーラムが理想のような気がします。

 

 そして「文学際―「文化科学」を発見する―」というテーマであった今回のフォーラムには、文化科学研究科以外からも参加して下さった教員や学生の方々が何人もいました。他研究科の方達にも興味を持って頂けそうな学際的な企画を考えました。幸いフォーラム参加者のアンケートは非常に良好で、過分のお言葉もいただきました。

 

 最後になりますが、ご多忙な中ご臨席下さった田村理事、永山理事に心より御礼申し上げます。そして、波乱含みであったフォーラムの開催を支えて下さった小島文化科学研究科長、献身的に尽くして下さった総研大学融合推進センターの藤井特任教授、七田特任准教授、基盤総括係の荒澤様、平川様、青柳様、国文研事務の岡田総務課長、川口係長、そして多大の労力を惜しまずに、フォーラム実現に邁進した学生企画委員の皆さんに、心より感謝申し上げます。

 

学術交流フォーラム2015担当
日本文学研究専攻 専攻長
山下 則子